写真怪談

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錠前の内側

山奥の高速道路とバイパスに挟まれた、施錠済みの小さな物置小屋。道路整備員がそこで見た南京錠は、開ける側だけを“内側”へ向けていた。
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傘袋の欄干

晴れた日だけ濡れている、二階の欄干に掛かった透明な袋――その内側で、何かが少しずつ根を張っていました。
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剥がれない貼り札

路地の植え込みにある、スプレー缶で作られた小さな鳥居。そこに貼られた無数のステッカーは、剥がれているのではなく、誰かを選んで戻ってくるのかもしれません。
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鳥の顔が見ている

昼間の路地で見つけた、奇妙な鳥の落書き。だが“それ”は、見るたびに少しずつ形を変えていた――。
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吹き抜けの内側

閉館後の吹き抜けで、一灯だけ遅れて点く理由を知ってしまった人は、もう真下を歩けなくなります。
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七日目の鯉

子供の日を過ぎても神社に残された鯉のぼり――それは、少し遅れてやってくる子を待つためのものでした。
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赤で空く車線

昼の交差点、赤信号のたびに「バス専用」の車線だけが、誰も乗らないはずの扉を開けていた。
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梢の首数

昼の公園で、梢を撮っていた男性。シャッター音は、いつからか木の上から返ってくるようになっていた。
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黒壁のぬるさ

自販機の冷たい光に挟まれた黒い壁だけが、夜ごとに人肌のぬるさを帯びていく――。
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水面の継ぎ目

昼の高架下、水面にだけ実在しない階層が映る――その継ぎ目を見てしまった者に残る、黒い指の痕跡。
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赤い支柱の借家

夕方の路地に立つ小さな巣箱は、鳥ではなく、部屋から抜け落ちた“居た感じ”を少しずつ借りていた。
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下から乾く階段

夜明け前、誰も使わない外階段だけが、下から一段ずつ乾いていく。
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曲がり道の縫い目

夜の曲がり道に並ぶ白い道路標示は、ただのペンキではなかったのかもしれない。
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空表示の下

高架下の歩道で、緑の「空」表示だけが、夜ごと違うものの空きを数えていた。
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積二トンの夜

夜の商店街で、何も載せていないはずの道だけが、少しずつ重くなっていく。
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葉を噛む木面

葉に隠れた木彫りの口元だけが、毎朝少しずつ濡れていた――古い店先に残る、噛み跡の怪談です。
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歩幅の返却口

横断歩道へ出るだけの短い隙間で、消えた一歩はどこへ返されるのか。
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木像の息継ぎ

窓を塞がれた古美術商の小さなショーケースは、深夜になると町の音を一息ずつ吸いはじめる。