機械知のほとり

機械やAIと人間とのあわいに、奇妙な影が生じることがあります。

技術の進歩と共に広がる不可解さを題材にした怪談を収めています。

写真怪談

継ぎ輪

昼の路地で、電気の唸りが二拍だけ止むたび、外壁の配管に“ありえない継ぎ目”がひとつずつ増えていく。
写真怪談

八羽目が降りない

花の終わった桜の隙間に立つ古いアンテナには、毎年この時季だけ、声を出さない雀が増えていく。
ウラシリ怪談

到着予定

延期されたはずの月計画で、まだ使われていない予定欄だけが先に社内を歩き始めたそうです。
写真怪談

送風跡

電源を落としたはずの弱冷房車の屋根だけが、夜ごと少しずつ冷えた跡を伸ばしていく。
写真怪談

検知枠

防犯アプリが二重に送ってくる通知には、いつも“一人ぶん足りない”何かが写っていました。
ウラシリ怪談

受け身のいない床

追加キャラクターの動きが完成した夜から、誰もいない床が受け身を取りはじめたそうです。
ウラシリ怪談

十三インチの隙間

閉じたはずの新しいノートの隙間に、もうひとつ細長い“部屋”が残っていたそうです。
晩酌怪談

残機

深夜の晩酌と古いシューティングゲーム。その残機表示が、いつからかグラスの氷と同じ数で動くようになった。
ウラシリ怪談

百二十一番目の観測点

全国120地点のはずの花粉観測網に、三月七日だけ現れる“百二十一番目”があるそうです。
写真怪談

網目の零番

夕暮れのテニスコート脇、ゴルフ練習場の防球ネットを見上げた一枚に“欠けた網目”が残った――その空白は、拡大するたび位置を変える。
ウラシリ怪談

喉を借りるペルソナ

「助手役を演じてください」――その一言が、“座るはずのない誰か”の席を用意してしまったそうです。
ウラシリ怪談

救助用ロープがほどけるまで

無人のはずの帰還カプセルが、初めての海上回収で“誰かの痕”だけを持ち帰ったそうです。
ウラシリ怪談

百目盛りの端面

57.6Tbpsが通った夜、端面に“百の睫毛”みたいな輪が残ったそうです。
写真怪談

暗層勤務表

明るい展望フロアの直下で、暗い窓だけが“勤務”を続けている理由を、あなたは見てしまいます。
写真怪談

目地が増える

舗道の円い蓋のまわりだけ、苔が“縫い付けられた”ように増えていく──その写真が、いつの間にか更新されていた。
写真怪談

6番改札のICだけが消えない

終電後の改札で、6番だけが「IC」の灯りを残し、誰にも見えない“通過”を繰り返していました。
写真怪談

境界の窓

「乗務員室」の窓に浮かぶ白い文字が、いつから“こちら側”を見返すようになったのか。
ウラシリ怪談

七日間の間口

駅のロッカーで“予約していない一冊”が七日間だけ混ざり続け、最後に白い封筒が残ったそうです。