コンクリートの天井に、靴底が一足分、浮き出ていた。へこみではない。灰色の面から黒いゴムの模様だけが数ミリほど盛り上がり、踵の摩耗も細かな砂粒も、そのまま固めたように鮮明だった。
そこは城址公園の外縁にある橋の下で、一般の来園者は入れない管理用通路だった。公園へ続いているように見えるが、奥は鉄柵で閉ざされている。私は照明用の配線を点検するため、市の担当者と中へ入った。
頭上の橋を、制服姿の学生たちが渡っていった。足音が真上を通過するたび、天井の表面がわずかに膨らむ。一歩、もう一歩。靴底の模様が橋の端から公園側へ向かって次々に現れ、コンクリートの天井を誰かが逆さまに歩いているようだった。
どの跡も触れると柔らかかった。まだ温かいゴムを押しているように沈み、指を離すとゆっくり元へ戻った。学生たちが渡り終えると、それらは一斉に硬くなった。
市の担当者は、上を通った人数を見ていたという。六人だった。天井には七人分の足跡があった。最後の一人だけ進行方向が逆で、学生たちを追うのではなく、橋の中央へ引き返していた。
翌日、近くの学校から市役所へ連絡が入った。生徒数人の靴底から、滑り止めの模様が消えていたという。刃物で削った跡も、熱で溶けた痕もない。表面だけが均一に平らになり、灰色の粉を薄くまとっていた。
そのうちの女子生徒が履いていた右靴には、奇妙な跡が残っていた。底の中央に、大人の親指の指紋が浮いていた。それは、前日に天井の靴底へ触れた私の指紋と一致した。
通路はすぐに封鎖された。しかし三日後、女子生徒が橋の上で動けなくなった。右足だけが路面に吸いつき、いくら引いても持ち上がらない。教師と通行人が身体を抱えて引き剥がした瞬間、靴の底が音もなく剥がれた。接着剤の跡は残っていなかった。もともと底など付いていなかったように、靴の下面は布一枚になっていた。
同じ時刻、封鎖された通路の天井では、逆向きだった七人目の足跡が深く沈み込んだ。その表面には、剥がれた靴底のメーカー名と、傷の位置まで完全に写っていた。
市は天井の一部を切り出した。厚さ二十センチほどのコンクリートの内部から、女子生徒の靴底が見つかった。表面から八センチ奥に、空洞も亀裂もなく埋まっていた。靴底の下には、薄い皮膚のような膜が貼りついていた。
鑑定では人間の角質に近いとされたが、女子生徒の足に傷はなかった。ただし事故のあと、彼女の右足から指紋のような細かな足紋がすべて消えていたという。
通路はコンクリートで完全に埋められた。それから一か月ほどして、彼女の足紋は少しずつ戻り始めた。踵から一日分ずつ、線が増えていった。
同じころ、埋めたはずの通路の天井にも、裸足の跡が一日一歩ずつ現れた。橋の中央から、城址公園の奥へ向かっている。現在、その跡は鉄柵の前まで到達している。
だが先週、柵の向こう側を点検した職員が、湿った土の上に裸足の跡を見つけた。公園の奥から橋へ戻ってくる向きだった。足紋は、女子生徒のものと一致した。
その日、彼女は学校を休んでいなかった。橋の上を、いつもの友人たちと歩いていたという。ただ、引率した教師は気になったことがあると話している。
橋を渡っていた学生は六人だった。
欄干の下を通過した影は、七つあった。
この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。

