街角の異変

写真怪談

区域内の白い人

昼の街路、白いシートをかけた荷台のそばで、誰も乗せていないはずの赤いケースがひとつ多く鳴り始める。
写真怪談

階段の喉

青空の下にあるただの階段で、手すりが手首を噛み、壁の赤い落書きが“次の顔”を待っていた。
写真怪談

水溜まりの靴

雨の駅前に残されたのは、足跡ではなく、床そのものが歩き出すための目印だった。
写真怪談

四十五リットルの首

朝の歩道に並んでいた透明なゴミ袋。その中の首は、回収されるものではなく、まだ誰かを選んでいる途中だった。
写真怪談

四十五リットルの皮

雨の日の歩道に並ぶ白い袋。その中身は、ごみではなく、誰かから少しずつ剥がれ落ちたものだった。
写真怪談

駐輪場の余白

雑居ビルかマンションかも分からない古い建物の一階で、誰も停めていないはずの場所だけが、少しずつ埋まっていく。
写真怪談

赤信号の上

都心の夜、赤信号は地上の車だけを止めているわけではなかった。
写真怪談

三人目の乾き

雨の夜、赤い傘と白い傘の横にだけ、濡れない場所がついてきていた。
写真怪談

桁裏の車列

高架の裏を、車体のないライトだけが走っていく。通り過ぎたあと、歩道ではなく金網にタイヤの跡が残っていた。
ウラシリ怪談

六万軒目の搭乗口

欠航の空港で配られた整理券、その六万枚目だけが、どこにも飛ばない搭乗口を示していたそうです。
写真怪談

軒下の先客

朝の開店準備中、まだ暖簾も出ていない店先に、“最初の客”の痕跡だけが残っていた。
写真怪談

橋裏の水位札

橋の下に貼られた小さな水位札は、ただの管理表示ではありませんでした。水面に残る線と、写らないはずの足跡が、少しずつこちら岸へ近づいてきます。
写真怪談

縞に読まれる朝

朝のオフィス街で、誰もが同じ方向へ歩いている――その足元の縞だけが、人を静かに読み取っていた。
写真怪談

白い配管の吸い跡

昼の外壁に這う白い配管は、排水ではなく、街の何かを静かに吸い上げていた。
晩酌怪談

酒ケーキの列

商店街の片隅に揺れる「酒ケーキ」ののぼり——試食を断っただけなのに、甘い怪異は律儀に追いかけてくる。
写真怪談

剥がれない貼り札

路地の植え込みにある、スプレー缶で作られた小さな鳥居。そこに貼られた無数のステッカーは、剥がれているのではなく、誰かを選んで戻ってくるのかもしれません。
写真怪談

赤で空く車線

昼の交差点、赤信号のたびに「バス専用」の車線だけが、誰も乗らないはずの扉を開けていた。
ウラシリ怪談

九条だけが折れている

5万人が去ったあとの広場で、清掃員が見つけたのは、地面の下に折りたたまれていた“第九条”でした。