街角の異変

写真怪談

肘痕

夕方の高い通路で、手すりに残っていたのは一人分の体温ではありませんでした。
写真怪談

二番待ち

終バスを待つ細い停留所で、なぜか「二番目」に立った人だけが、毎晩きれいに消えていくのです。
写真怪談

電線の赤い花びら

満開の桜の下、昼の路線バスが通るたび、一本の電線だけが真っ赤な花びらで太っていく。
写真怪談

青札

駅前の駐輪場に、ときどき「日付のない青札」が下がる。その札に触れた自転車は、夜のうちに一度だけ誰かを送りに出るらしい。
写真怪談

ひとつぶんの影

車のリアガラスに映っていたのは、春の街路と、いるはずのない親子連れでした。けれど歩道に落ちていた影は、どう見ても一人分しかなかったのです。
写真怪談

進入禁刻

藪に埋もれた「進入禁止」の時間だけが、毎日こちらへ寄ってくる。
写真怪談

屋上の喪服男

晴れた昼、屋上の柵の内側に“喪服の男”が立っていた──見間違いで済ませられないのは、写真の中の柵が一本だけ増えていたから。
写真怪談

消火ホース逆流

小火で塞がれた住宅街の渋滞の中、園児バスの窓だけが“濡れて”いた――三階から見下ろした主人公が拾ってしまう、消火ホースの逆流。
写真怪談

無音の止まり木

解体現場の横で群れるスズメは、鳴き声ではなく“無音”を守っているように見えた。
写真怪談

席は窓際

閉店したはずのショーウィンドウが、内側から曇る夜がある——短冊の「本日おすすめ」が、なぜかあなたの席を決めてしまう。
ウラシリ怪談

三月末に“正式に”なるもの

公園に立った“柱”の隣には、縦長の大きな画面がありました――そこに浮かんだのは、案内ではなく「目次」でした。
写真怪談

寺院通3番の着信

珍しく雪が積もった都内の昼下がり、「寺院通3番」で鳴ったはずのない着信。ガラスの“内側”に触れた瞬間、街角の静けさが形を変えはじめる。
写真怪談

黄色いリベットと「Hello」

都内の高架下、黄黒の橋脚に貼られた「Hello my name is」だけが、なぜかいつも新しい――その理由に気づいた夜から、呼ばれるはずの名前が消え始めた。
写真怪談

手を下ろさぬ

正月二日のアーケードで、笑うたぬきと写真を撮った——それだけのはずだったのに。
写真怪談

近道々

年末の露店通り、「駅近道→」の下を進むたび、案内の文字だけが増えていく。
写真怪談

植え込みの青い星が数える

クリスマスの植え込みに這う青い光――その点滅が「戻ってこなかった数」を覚えているとしたら。
写真怪談

交番のガラスに、次の顔

留守が多いはずの住宅街の交番に、珍しく警官がいた――ただ、瞬きもしないまま正面を見続けていて。
写真怪談

境界柵の規程

夕暮れの交差点で、許可と禁止の標識が“あなたの枠”を少しずつ削っていく——黒い柵の向こうに、規程の影が立つ。