異物

写真怪談

同じ手袋が二つ

共有畑の支柱に残されていた、使い古した手袋。持ち主はすぐに見つかった――ただし、その人の鞄の中にも、まったく同じ手袋が入っていた。
写真怪談

平らにならない土

平らにしたはずの駐車場の中央へ、毎朝同じ土の山が戻ってくる。青いシートで地面を塞いでも、それは止まらなかった。
写真怪談

灯りの輪の外に立つ人

焚き火を囲んでいたのは、確かに三人だった。けれど森の暗がりには、火が弱くなるほど輪郭をはっきりさせる誰かが立っていた。
写真怪談

青い養生の奥の部屋

空き家の脇を覆う青い養生の前では、ときどき、そこにあるはずのない「誰かの暮らし」の匂いがする。
ウラシリ怪談

八月二十四日の薄膜

電気を通すはずのないものに、初めて電気を通した人が亡くなった夜。古い研究室では、何にもつながっていない一枚の薄膜が、静かに光っていたそうです。
写真怪談

同行者の重さ

食事を終えた旅行者が立ち上がったとき、さっきまで片手で引いていたキャリーケースは、二人がかりでも床から離れなくなっていました。
写真怪談

十五年目のねじ

捨てた家電から抜けたねじは、いったい誰のところへ戻るのか。十五年前のリサイクルセンターで始まった異変は、今も皮膚の下で回り続けている。
写真怪談

分別される庭

片づけるはずだった裏庭の廃材は、いつからか人間のほうを分別しはじめていた。
写真怪談

剥がれない貼り札

路地の植え込みにある、スプレー缶で作られた小さな鳥居。そこに貼られた無数のステッカーは、剥がれているのではなく、誰かを選んで戻ってくるのかもしれません。
ウラシリ怪談

二十四番目のおまとめ便

「明日行ける」と印刷された連休の案内。その紙にだけ、二十四番目の投票先が紛れていました。
ウラシリ怪談

113体目の落札箱

落札したのは、112体のぬいぐるみだったはずでした。けれど6箱目には、数えてはいけない“門”が混じっていたそうです。
ウラシリ怪談

まだ舞台を知らない靴

二千点を超える衣裳を詰める夜、まだ一度も海を越えていないはずの靴のつま先だけが、少しずつ削れていったそうです。
写真怪談

口移し

苺餡と芋餡のたい焼きを並べた夜だけ、ショーケースの内側には、向かい合った吐息のような曇りが二つ残る。
ウラシリ怪談

十三インチの隙間

閉じたはずの新しいノートの隙間に、もうひとつ細長い“部屋”が残っていたそうです。
写真怪談

拾球当番

夕暮れの住宅街で、投光器が点く前にだけ家の中から鈍い音がする。翌朝なくなっているのは、なぜか決まって“丸いもの”だった。
写真怪談

屋上の喪服男

晴れた昼、屋上の柵の内側に“喪服の男”が立っていた──見間違いで済ませられないのは、写真の中の柵が一本だけ増えていたから。
ウラシリ怪談

無料観覧の発掘面

展示ケースの下の床面にだけ“発掘区画”が浮き、角には「観覧無料」の札が置かれていたそうです。
ウラシリ怪談

鍵束の異物

交番の保管棚には、拾得された数十本の鍵が金具で束ねられていたそうです。家の鍵、車の鍵、自転車の鍵……番号札が一つずつ付けられ、誰が見ても整然としていたといいます。しかしある夜勤の署員が数を確認すると、昨日より一本多くなっていたそうです。新たな届け出はなく、署員の誰も追加していないのに、束の中に見慣れない鍵が紛れていたといいます。不審に思い、その鍵を取り出すと、刻印も番号もなく、先端には黒ずんだ焦げ跡のような痕が残っていたそうです。さらに溝には細い毛や、爪の欠片のようなものが詰まっていたといいます……。日を追うごとに、同じように“届けられていないはずの鍵”が束に増えていったそうです。それらはいずれも、使用の痕跡が不自然に生々しく、まるで何かを無理やりこじ開けた直後のようだったといいます。最後に見つかった一本は、署員が腰に提げていた自宅の鍵とまったく同じ形をしていたそうです。ただしその鍵だけは、まだ誰も使っていないはずなのに、握った感触が冷たく湿っていたといいます……。この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに...