写真怪談

橋の中の氷

川沿いの低い橋で、日なたの白い柱だけが濡れていた。冷凍配送トラックが通り過ぎたあとも、その冷たさは消えなかった。
ウラシリ怪談

隣を走る、もうひとり

体育の日、無料開放された体育館で、走るのが苦手な少年の隣から、もうひとり分の足音が聞こえ始めました。誰もいないはずの場所で、その足音は少年と一緒に、少しずつ速くなっていったそうです……。
写真怪談

無音を積む荷台

落ちた土砂は、確かに荷台を揺らした。けれど、その衝撃だけが聞こえなかった。消えたはずの音が戻ってきたのは、トラックが空になった夜だった。
写真怪談

眠りの通る窓

窓際では二人が眠り、ホームでは大勢の人が行き交っていた。異変が起きたのは、その黒い窓枠の内側だけだった。
写真怪談

十五段目の錆

十四段だったはずの錆びた外階段は、解体を待つあいだ、一段ずつ長くなっていった。
写真怪談

同じ手袋が二つ

共有畑の支柱に残されていた、使い古した手袋。持ち主はすぐに見つかった――ただし、その人の鞄の中にも、まったく同じ手袋が入っていた。
ウラシリ怪談

土が空けていた一間

埋め戻したはずの土地で、青いシートの上の土だけが、毎朝ひとつの「空き部屋」を作っていました。
写真怪談

平らにならない土

平らにしたはずの駐車場の中央へ、毎朝同じ土の山が戻ってくる。青いシートで地面を塞いでも、それは止まらなかった。
ウラシリ怪談

公開情報だけが、あたたかかった

止められたAIの研究室で、誰も印刷していない「公開情報だけの紙」が一枚ずつ増えていった――そこには、ネットには載っていないはずの“温度”が残っていました。
写真怪談

三人乗りの空洞

雨上がりの公園で、三人乗りの赤い遊具に触れた作業員は、硬い座面の下から妙な力を感じた。壊れているようには見えない。けれど撤去して調べると、その異常は外からは決して触れられない場所に残っていた。
写真怪談

歩道の裏の足跡

祭りが終わり、人影の消えた雨の歩道。それでも黄色い道の上では、巡回する二人のあとを、もう一組の「足」が歩き続けていた。
ウラシリ怪談

青い葉だけが、乾かなかった

亡くなった奏者を偲ぶ、二日間だけの祭りの追悼ブース。誰も持ち込んでいないはずの青い葉だけが、最後まで乾かなかったそうです。
写真怪談

立枯れの人

夜のマンション公園で、木に顔を寄せるように立っていた人。近づけば消え、先を見ると、また別の木の脇に立っている。やがて管理札には、健康な木にはあるはずのない文字が現れ始めた。
写真怪談

内側から結ばれた袋

祭りの一日目が終わった駅前で、片づけるはずだったのは、食べ残しと容器だけだった。
ウラシリ怪談

ガラスの中のごほうび

靴のにおいを追った犬が立ち止まったのは、探している人がいた場所ではなく、三脚の青い椅子だけが残る、誰もいないガラス張りの事務所でした。
写真怪談

空室のメーター

電気の流れる先は、もう存在しない。それでも夜になると、一台だけのメーターが、かつてそこに住んでいた人の生活を繰り返していた。
写真怪談

頭上を走る車道

人の頭上を映すエスカレーターの鏡面に、そこには存在しない一本の車道が通り始めた。
写真怪談

吸気口の向こう

停止しているはずの設備が、毎日同じように空気を吸っていた。その配管を切り離したとき、ようやく分かった。吸い込まれていたものは、空気だけではなかったらしい。