ウラシリ怪談

まだ誰も乗っていないエスカレーター

まだ誰も乗っていないはずのエスカレーター。その新品の手すりには、二人の手が何度も触れたような跡が残されていました。新しい改札の開通を待つ駅のホームで、誰かが一足先に歩き始めているのでしょうか……。
写真怪談

開通前のすれ違い

まだ開いていない改札へ続く、ホームの端のエスカレーター。その前では、ときどき誰もいない相手に道を譲ってしまう人がいた。姿は見えない。それでも、誰かが確かに通り過ぎていくという。
ウラシリ怪談

木守り柿の夜

秋の夜、甘くした柿を一つだけ山の古木へ返す習わし。その柿は、鳥のために残されているのではないそうです。
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頭上注意の空白

何もないはずの頭上に、なぜ「注意」が必要なのか。住宅街の細い路地で、人々がいつの間にか身につけていた、小さな習慣の話です。
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傘の内側の白線

雨の繁華街で、路面と透明傘のあいだを、誰にも説明できない「白いもの」が移り始めた。
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宛先のない約束

住宅街の分かれ道に立つ、赤い郵便ポストとカーブミラー。撤去が決まったそのポストには、宛名も切手もない手紙が残されていました。そして、誰もいないはずの交差点の鏡には、あるはずのない懐かしい光景が映り始めます。届かなかった約束をめぐる、静かで不思議な現代怪談。
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ポストの後ろの家

川沿いの遊歩道と細い路地。その境目に立つ赤いポストの後ろには、普段なら家一軒が入る余地などない。けれど、川と光と郵便物の条件が揃った午後だけ、そこには古い玄関が現れるという。
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橋の中の氷

川沿いの低い橋で、日なたの白い柱だけが濡れていた。冷凍配送トラックが通り過ぎたあとも、その冷たさは消えなかった。
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隣を走る、もうひとり

体育の日、無料開放された体育館で、走るのが苦手な少年の隣から、もうひとり分の足音が聞こえ始めました。誰もいないはずの場所で、その足音は少年と一緒に、少しずつ速くなっていったそうです……。
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無音を積む荷台

落ちた土砂は、確かに荷台を揺らした。けれど、その衝撃だけが聞こえなかった。消えたはずの音が戻ってきたのは、トラックが空になった夜だった。
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眠りの通る窓

窓際では二人が眠り、ホームでは大勢の人が行き交っていた。異変が起きたのは、その黒い窓枠の内側だけだった。
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十五段目の錆

十四段だったはずの錆びた外階段は、解体を待つあいだ、一段ずつ長くなっていった。
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同じ手袋が二つ

共有畑の支柱に残されていた、使い古した手袋。持ち主はすぐに見つかった――ただし、その人の鞄の中にも、まったく同じ手袋が入っていた。
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土が空けていた一間

埋め戻したはずの土地で、青いシートの上の土だけが、毎朝ひとつの「空き部屋」を作っていました。
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平らにならない土

平らにしたはずの駐車場の中央へ、毎朝同じ土の山が戻ってくる。青いシートで地面を塞いでも、それは止まらなかった。
ウラシリ怪談

公開情報だけが、あたたかかった

止められたAIの研究室で、誰も印刷していない「公開情報だけの紙」が一枚ずつ増えていった――そこには、ネットには載っていないはずの“温度”が残っていました。
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三人乗りの空洞

雨上がりの公園で、三人乗りの赤い遊具に触れた作業員は、硬い座面の下から妙な力を感じた。壊れているようには見えない。けれど撤去して調べると、その異常は外からは決して触れられない場所に残っていた。
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歩道の裏の足跡

祭りが終わり、人影の消えた雨の歩道。それでも黄色い道の上では、巡回する二人のあとを、もう一組の「足」が歩き続けていた。