写真怪談

外壁の窓

トンネルの中を走るはずの電車が、ある日から外壁のほうに窓を並べ始めました。
写真怪談

八人目の向き

放課後の公園で、七人しか座っていないはずの遊具が、毎日ひとり分だけ遅れて軋む──背中しか見せない理由を知ったとき、もう正面には回れません。
写真怪談

二人乗りの欄

春から厳しくなった自転車の取り締まり。その夜、警官が切った一枚の紙には、誰も見ていない「もう一人」の違反が残っていた。
写真怪談

定時の遊具

毎日同じ時間、同じ遊具に座って中国語で電話をかける男。近所では見慣れた光景だったはずなのに、誰もいない日にだけ“通話の続き”が始まりました。
写真怪談

下りきらない昼

昼休みの公園で、子どもの遊具にしゃがみ込む背広の男を見かけた。その姿は翌日も変わらなかったが、先に沈み始めたのは、本人ではなく影のほうだった。
写真怪談

点灯前の一本

始発前の駅ビル前。人影より一本多い足音が、頭上の“空いた丸穴”の真下で必ず重なる――。
写真怪談

活着痕

伐られて終わったはずの桜は、切り株の奥ではまだ“次の接ぎ先”を探していました。
写真怪談

敷かれない席

使わなかった花見マットの内側にだけ、どうして前かごの網目が残っていたのでしょうか。
写真怪談

登り痕

塀の上に揃えて置かれた黒い革靴。誰が捨てても翌朝には戻り、今度は「上」に向かう足跡だけが少しずつ増えていきます。
写真怪談

三席目

屋上の二脚は、誰も座っていないはずの一辺だけを、毎日きれいに空けて待っていました。
写真怪談

底歩き

雨上がりの緑道で、水たまりだけが「こちらへ来る誰か」を先に映していました。
写真怪談

肘痕

夕方の高い通路で、手すりに残っていたのは一人分の体温ではありませんでした。
晩酌怪談

夜勘定

昼の一杯のはずだったのに、伝票にはまだ来ていないはずの「今夜の自分」の会計が先に印字されていた。
写真怪談

祈影

昼の教会で見つけたのは、影ではなく“祈った跡”でした。
ウラシリ怪談

四袋目の水やり日

黒い袋は三つのはずでした。春になるころ、札のない四つ目だけが、まだ中で静かに湿っていたそうです。
写真怪談

隙間の顔

人が入れる幅もない、建物裏の配管の隙間。けれど夕方だけ、そこに“顔から先に来る何か”がいる。
写真怪談

継ぎ輪

昼の路地で、電気の唸りが二拍だけ止むたび、外壁の配管に“ありえない継ぎ目”がひとつずつ増えていく。
ウラシリ怪談

遊んだあとの返送票

祭りの景品を扱う問屋に、使い終わったはずの水鉄砲の的が、返送票つきで戻ってくるようになったそうです。