写真怪談

傘の内側の雨

晴れた昼の路地で、なぜか傘は“外側”ではなく“内側”から濡れはじめる――その湿りが上へ這いあがったとき、誰も見ていない通路がもう一段、頭上に重なっていました。
写真怪談

空瓶の口数

店の裏に積まれた空瓶は、どうして毎朝一本ずつ増えているのか。数えた者だけが、その“口”の使い道を知ることになる。
写真怪談

石の向き

晴れた昼だけ妙に静かなあの細道で、足元の小石は、誰のために向きをそろえていたのでしょうか。
ウラシリ怪談

三人目の旅程

4/22の「よい夫婦の日」に合わせた旅行アンケートへ答えただけでした。なのに印刷された旅程表は、二人ぶんでは終わらなかったのです。
写真怪談

外壁の窓

トンネルの中を走るはずの電車が、ある日から外壁のほうに窓を並べ始めました。
写真怪談

八人目の向き

放課後の公園で、七人しか座っていないはずの遊具が、毎日ひとり分だけ遅れて軋む──背中しか見せない理由を知ったとき、もう正面には回れません。
写真怪談

二人乗りの欄

春から厳しくなった自転車の取り締まり。その夜、警官が切った一枚の紙には、誰も見ていない「もう一人」の違反が残っていた。
写真怪談

定時の遊具

毎日同じ時間、同じ遊具に座って中国語で電話をかける男。近所では見慣れた光景だったはずなのに、誰もいない日にだけ“通話の続き”が始まりました。
写真怪談

下りきらない昼

昼休みの公園で、子どもの遊具にしゃがみ込む背広の男を見かけた。その姿は翌日も変わらなかったが、先に沈み始めたのは、本人ではなく影のほうだった。
写真怪談

点灯前の一本

始発前の駅ビル前。人影より一本多い足音が、頭上の“空いた丸穴”の真下で必ず重なる――。
写真怪談

活着痕

伐られて終わったはずの桜は、切り株の奥ではまだ“次の接ぎ先”を探していました。
写真怪談

敷かれない席

使わなかった花見マットの内側にだけ、どうして前かごの網目が残っていたのでしょうか。
写真怪談

登り痕

塀の上に揃えて置かれた黒い革靴。誰が捨てても翌朝には戻り、今度は「上」に向かう足跡だけが少しずつ増えていきます。
写真怪談

三席目

屋上の二脚は、誰も座っていないはずの一辺だけを、毎日きれいに空けて待っていました。
写真怪談

底歩き

雨上がりの緑道で、水たまりだけが「こちらへ来る誰か」を先に映していました。
写真怪談

肘痕

夕方の高い通路で、手すりに残っていたのは一人分の体温ではありませんでした。
晩酌怪談

夜勘定

昼の一杯のはずだったのに、伝票にはまだ来ていないはずの「今夜の自分」の会計が先に印字されていた。
写真怪談

祈影

昼の教会で見つけたのは、影ではなく“祈った跡”でした。