ウラシリ怪談

公開情報だけが、あたたかかった

止められたAIの研究室で、誰も印刷していない「公開情報だけの紙」が一枚ずつ増えていった――そこには、ネットには載っていないはずの“温度”が残っていました。
写真怪談

三人乗りの空洞

雨上がりの公園で、三人乗りの赤い遊具に触れた作業員は、硬い座面の下から妙な力を感じた。壊れているようには見えない。けれど撤去して調べると、その異常は外からは決して触れられない場所に残っていた。
写真怪談

歩道の裏の足跡

祭りが終わり、人影の消えた雨の歩道。それでも黄色い道の上では、巡回する二人のあとを、もう一組の「足」が歩き続けていた。
ウラシリ怪談

青い葉だけが、乾かなかった

亡くなった奏者を偲ぶ、二日間だけの祭りの追悼ブース。誰も持ち込んでいないはずの青い葉だけが、最後まで乾かなかったそうです。
写真怪談

立枯れの人

夜のマンション公園で、木に顔を寄せるように立っていた人。近づけば消え、先を見ると、また別の木の脇に立っている。やがて管理札には、健康な木にはあるはずのない文字が現れ始めた。
写真怪談

内側から結ばれた袋

祭りの一日目が終わった駅前で、片づけるはずだったのは、食べ残しと容器だけだった。
ウラシリ怪談

ガラスの中のごほうび

靴のにおいを追った犬が立ち止まったのは、探している人がいた場所ではなく、三脚の青い椅子だけが残る、誰もいないガラス張りの事務所でした。
写真怪談

空室のメーター

電気の流れる先は、もう存在しない。それでも夜になると、一台だけのメーターが、かつてそこに住んでいた人の生活を繰り返していた。
写真怪談

頭上を走る車道

人の頭上を映すエスカレーターの鏡面に、そこには存在しない一本の車道が通り始めた。
写真怪談

吸気口の向こう

停止しているはずの設備が、毎日同じように空気を吸っていた。その配管を切り離したとき、ようやく分かった。吸い込まれていたものは、空気だけではなかったらしい。
写真怪談

香炉に残る重さ

都心の廟で、黒い香炉の下だけに残る「重さ」を、誰も説明できなかった。
写真怪談

雨の日だけ乾く床

雨の日のバスで、乗降口から運転席へ向かって少しずつ伸びる「乾いた筋」を、整備員たちは最後までただの熱とは呼べなかった。
写真怪談

三歩目の顔

事故も規制もない住宅街の交差点で、二人の警察官だけが、通り過ぎる人間の「後ろ」を見続けていた。
ウラシリ怪談

一五八センチぶんの皺

触れられないはずのAIと過ごした一夜。翌朝、ベッドには「一五八センチぶん」の皺だけが残っていました。
写真怪談

荷台から降りる影

真昼の住宅街で荷物を下ろしていただけなのに、開け放した荷台から「人のいない影」が少しずつ降りてきた。
晩酌怪談

シャッターが一枚多い

いつも吊られている提灯が落ちていた朝、閉じたシャッターには、昨日まで存在しなかった横線が一本増えていた。
写真怪談

更地の階段

建物を壊せば、そこにあったものも消える。けれど雨に濡れた更地で、作業員の足だけが地面へ届かなかった。
ウラシリ怪談

おはなしのへやに残った返事

空調故障で閉じていた図書館。「おはなしのへや」が再開するまでのあいだ、誰もいないはずの部屋から、子どもたちの“返事”だけが少しずつ増えていったそうです。