土地と風習

土地に根づいた風習や人々の営みを題材にした怪談を集めています。

風景や祭礼の記録に紛れ込む、説明のつかない歪みが物語となり、古い土地の記憶と共鳴するのかもしれません……。

ウラシリ怪談

ひとり分の湯

閉店を告げた北の銭湯では、最後の客が帰ったあとも、毎晩きっちり“一人分”だけ湯が減っていたそうです。
ウラシリ怪談

氷の内側の轍

三月と四月のあいだだけ、氷の下にもうひとつの轍が走る村があるそうです。
写真怪談

替皮

境内の片隅に置かれた、片目の欠けた石の蛙と二匹の亀。冬の最初に供えられる柚子には、寺の者が決して早く片づけない理由がありました。
写真怪談

花芯

花見客で賑わう桜並木で、落ちた花びらの“芯”だけが揃って赤くなる区間がある。冗談のような迷信を調べた先で、春の道が何を抱えたまま咲いているのかを知ってしまう。
ウラシリ怪談

百十八段のひとり分

雨で中止になったはずの石段に、“座った跡”だけが百十八段ぶん残ったそうです。
ウラシリ怪談

無料観覧の発掘面

展示ケースの下の床面にだけ“発掘区画”が浮き、角には「観覧無料」の札が置かれていたそうです。
ウラシリ怪談

玄関がまだ外だった

「裏から見ても同じに読める」札を玄関に掛けた家で、境目そのものが迷いはじめた――そんな噂です。
写真怪談

紙垂の影

いつもと違う路地を抜けたら、参道の入口が「最初からそこにいた」みたいに近くて――塀の上の鳩と紙垂が、静かに心をほどいていく話。
写真怪談

結び目のないブリキ缶

住宅地の中の農家、その納屋口で“いつもはすぐ消える猫”が動かなかった日――黄コンテナの上のブリキ缶は、ほどけない形で縛られていました。
写真怪談

狐壇の通路

五色の房が揺れる夜、白い狐たちが並び替わって“通路”をつくる――その先で、誰かの小さな願いがそっと帰ってくる。
写真怪談

網目の欠け

畑と道を分けるオレンジのネット。その“弛んだ一点”をスマホで確かめた瞬間、三人の影が四つになった。
写真怪談

打設前の三時刻

雨もないのに濡れ続ける基礎、足場に増えていく黒い布――そして写真の「時刻」が三つに割れていた。打設前の現場で、何が“固められよう”としていたのか。
写真怪談

赤い前掛けの結び目

冬の午後四時、どんど焼きの煙が“帰り道”をつくった――赤い前掛けの結び目だけが、去年と違っていた。
写真怪談

足跡が呼吸する

国道沿いの歩道に、一直線の“狐の足跡”が残っていた――ただし、跡の底だけが妙に生ぬるく、きらきら光っていた。
ウラシリ怪談

無音の百八

百八つのはずの鐘を記録した音が、役所の保管で増え続けるそうです…
ウラシリ怪談

年越しそばの録音

管理室で年越しそばを食べていたはずなのに、録音だけが“二人分”すすり続ける夜があるそうです…
写真怪談

茅の輪の向こうへ

大晦日の昼、初詣の準備が進む神社で茅の輪をくぐった――それだけのはずだったのに、輪の内側だけが妙に“あたたかい”。
写真怪談

赤い目印の先に、落とし物は戻らない

川面に浮かぶ落ち葉の島——赤い目印の先で拾ってしまった“落とし物”は、あなたの名前まで流していく。