駅の怪異

ウラシリ怪談

まだ誰も乗っていないエスカレーター

まだ誰も乗っていないはずのエスカレーター。その新品の手すりには、二人の手が何度も触れたような跡が残されていました。新しい改札の開通を待つ駅のホームで、誰かが一足先に歩き始めているのでしょうか……。
写真怪談

開通前のすれ違い

まだ開いていない改札へ続く、ホームの端のエスカレーター。その前では、ときどき誰もいない相手に道を譲ってしまう人がいた。姿は見えない。それでも、誰かが確かに通り過ぎていくという。
写真怪談

眠りの通る窓

窓際では二人が眠り、ホームでは大勢の人が行き交っていた。異変が起きたのは、その黒い窓枠の内側だけだった。
写真怪談

内側から結ばれた袋

祭りの一日目が終わった駅前で、片づけるはずだったのは、食べ残しと容器だけだった。
写真怪談

頭上を走る車道

人の頭上を映すエスカレーターの鏡面に、そこには存在しない一本の車道が通り始めた。
写真怪談

赤で沈む足元

雨に濡れた駅前の赤信号。渡るだけの場所で、足元だけがこちらを引き留めてくる。
写真怪談

乗る前の白い息

空港行きのバスを待つだけの夕方、乗り場の係員は、気温では説明できない「白さ」に気づいた。
写真怪談

欄干に分かれる人

駅前の歩道橋には、手すり越しにしか見えないものがある――しかも、見るたびに少しずつこちら側へ近づいてくる。
写真怪談

閉じ傘の息

客が去ったあとの椅子から、匂いだけが消えていく。閉じたパラソルの中では、代わりに四十七人分の「息」が膨らんでいた。
写真怪談

赤信号の分岐

雨に濡れた線路の奥で、赤信号がひとつ多く映っている――それは、存在しない分岐へ出発を待つものの灯りだった。
写真怪談

水溜まりの靴

雨の駅前に残されたのは、足跡ではなく、床そのものが歩き出すための目印だった。
写真怪談

掌の送り状

いくつもの線路を見下ろす歩道橋で、掌の線だけが送り状の押印欄として失われていく。
写真怪談

握り返す継ぎ目

遅延した満員電車で、連結部分の手すりだけが、人の手の温度を覚えていた。
写真怪談

先席の白い袋

優先席の下に落ちていた、空の白い袋。捨てても戻るそれは、少しずつ車内の表示から一文字を抜き取っていく。
写真怪談

三番の声だまり

試合後の群衆が駅へ押し寄せる高架下で、まだ誰も叫んでいないはずの歓声だけが、頭上から先に落ちてくる。
写真怪談

出発済の信号

赤信号が点いたのは、列車を止めるためではなく、すでに出発してしまった何かを記録するためだったのかもしれません。
写真怪談

黄色い戻り道

雨の日の駅出口にある黄色い点字ブロックは、人を導くためではなく、誰かを戻すために濡れていたのかもしれません。
ウラシリ怪談

除かれた朝の便

連休終盤の朝、満席のはずの便にだけ残っていた「除」の席――そこに乗った人たちは、見送られる側ではなかったのかもしれません。