季節の異変

ウラシリ怪談

四十メートルの舌

八百個の風鈴が鳴る四十メートルの参道で、最初に消えたのは音ではなく、短冊の影だったそうです。
ウラシリ怪談

昼の笹の一粒

七夕の昼、白紙の短冊に浮かんだのは、大きな願いではなく「ひとつでいいです」という小さな言葉でした。
写真怪談

卒業する短冊

七夕飾りに吊るされた願いごとは、いつから“叶ったあと”の言葉に変わっていたのか。
写真怪談

笹の手当て

七夕の笹に結ばれた願いのうち、誰かを思う短冊だけが、ほんの少し温かくなる。
写真怪談

七日目の鯉

子供の日を過ぎても神社に残された鯉のぼり――それは、少し遅れてやってくる子を待つためのものでした。
ウラシリ怪談

二十四番目のおまとめ便

「明日行ける」と印刷された連休の案内。その紙にだけ、二十四番目の投票先が紛れていました。
ウラシリ怪談

しょうぶの冠がほどける昼

こどもの日に入るしょうぶ湯。頭に巻けば温まるというその葉が、昼の湯気の中で、別の時代へほどけていきます。
写真怪談

敷かれない席

使わなかった花見マットの内側にだけ、どうして前かごの網目が残っていたのでしょうか。
写真怪談

八羽目が降りない

花の終わった桜の隙間に立つ古いアンテナには、毎年この時季だけ、声を出さない雀が増えていく。
ウラシリ怪談

氷の内側の轍

三月と四月のあいだだけ、氷の下にもうひとつの轍が走る村があるそうです。
写真怪談

替皮

境内の片隅に置かれた、片目の欠けた石の蛙と二匹の亀。冬の最初に供えられる柚子には、寺の者が決して早く片づけない理由がありました。
写真怪談

花芯

花見客で賑わう桜並木で、落ちた花びらの“芯”だけが揃って赤くなる区間がある。冗談のような迷信を調べた先で、春の道が何を抱えたまま咲いているのかを知ってしまう。
ウラシリ怪談

百二十一番目の観測点

全国120地点のはずの花粉観測網に、三月七日だけ現れる“百二十一番目”があるそうです。
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百十八段のひとり分

雨で中止になったはずの石段に、“座った跡”だけが百十八段ぶん残ったそうです。
ウラシリ怪談

十センチの影

「窓は十センチ、レースで四分の一」——その“正しい換気”を守った日から、カーテンの向こうに欠けた人影が立つようになったそうです。
写真怪談

欠損稜線

冬の夕焼けに浮かぶ富士山——その稜線が、写真の中でだけ静かに“欠け”はじめる。
ウラシリ怪談

二日分のスタンプ

二日間だけのはずだった催しの記録が、終わったあとも“二十秒ずつ”増え続けるそうです。
ウラシリ怪談

玄関がまだ外だった

「裏から見ても同じに読める」札を玄関に掛けた家で、境目そのものが迷いはじめた――そんな噂です。