植物の怪異

写真怪談

笑顔を抜いた手

青空の下、笑顔に加工されたひまわり。抜き取ったはずの種は、いったいどこへ行ったのでしょう。
写真怪談

植木のほうが下

水平なはずの住宅街で、家の中の「下」だけが、窓の外に立つ一株の植木へ向き始める。
写真怪談

火星人の根元

植物園で撮った何気ない一枚。その写真では、植物の根元に隠れていたものが、見るたびに少しずつ前へ出てきた。
写真怪談

鉢が食べる隙間

ハエトリグサが閉じるたび、部屋から「隙間」が一つずつ消えていく。冷蔵庫の裏、棚の下、そして指と指のあいだ――最後まで残る余白は、どこだろう。
写真怪談

指定名のない木

名前を覆った瞬間、天然記念物の古木は消えた――それでも、木の形をした「空白」だけは、そこに立ち続けていた。
写真怪談

まばたきの温室

まばたきの一瞬にだけ、温室の景色が残る。問題は、その景色の中で、ひとりだけ距離を詰めてくるものがいることだった。
ウラシリ怪談

昼の笹の一粒

七夕の昼、白紙の短冊に浮かんだのは、大きな願いではなく「ひとつでいいです」という小さな言葉でした。
写真怪談

笹の手当て

七夕の笹に結ばれた願いのうち、誰かを思う短冊だけが、ほんの少し温かくなる。
写真怪談

鉢底の息

花屋の棚に並ぶ鉢植えの下で、水ではないものが静かに息を吸っていた。
写真怪談

裏葉の橋

新緑に包まれた白い橋。その下で、葉は裏返り、石は誰も渡らない橋を作り始める。
晩酌怪談

菊が焼けるまで

焼き鳥を待つあいだ、マグロブツに添えられた小さな菊だけが、焼き場の方を向きはじめた。
写真怪談

傘袋の欄干

晴れた日だけ濡れている、二階の欄干に掛かった透明な袋――その内側で、何かが少しずつ根を張っていました。
写真怪談

梢の首数

昼の公園で、梢を撮っていた男性。シャッター音は、いつからか木の上から返ってくるようになっていた。
ウラシリ怪談

しょうぶの冠がほどける昼

こどもの日に入るしょうぶ湯。頭に巻けば温まるというその葉が、昼の湯気の中で、別の時代へほどけていきます。
写真怪談

葉を噛む木面

葉に隠れた木彫りの口元だけが、毎朝少しずつ濡れていた――古い店先に残る、噛み跡の怪談です。
写真怪談

畝に落ちる線

四月の終わり、晴れた貸し畑に落ちるはずのない六本目の線。その先は、蔦に覆われた家の中へ続いていました。
写真怪談

傘の内側の雨

晴れた昼の路地で、なぜか傘は“外側”ではなく“内側”から濡れはじめる――その湿りが上へ這いあがったとき、誰も見ていない通路がもう一段、頭上に重なっていました。
写真怪談

活着痕

伐られて終わったはずの桜は、切り株の奥ではまだ“次の接ぎ先”を探していました。