ウラシリ怪談

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一皿目の客

国を結ぶはずの夕食会で、招かれていない一皿だけが、次の故郷を待っていたそうです。
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三十日目の返品窓

買い物は、選ぶものだったはずです。けれど、三十日間だけ開いた返品窓の向こうで、選ばれていたのは別のものだったのかもしれません。
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九条だけが折れている

5万人が去ったあとの広場で、清掃員が見つけたのは、地面の下に折りたたまれていた“第九条”でした。
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十四時の車間

五月五日の上り線、十四時ちょうどに止まった車列で、ある一家は“自分たちの後続車”を見てしまったそうです。
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除かれた朝の便

連休終盤の朝、満席のはずの便にだけ残っていた「除」の席――そこに乗った人たちは、見送られる側ではなかったのかもしれません。
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二十四番目のおまとめ便

「明日行ける」と印刷された連休の案内。その紙にだけ、二十四番目の投票先が紛れていました。
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しょうぶの冠がほどける昼

こどもの日に入るしょうぶ湯。頭に巻けば温まるというその葉が、昼の湯気の中で、別の時代へほどけていきます。
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113体目の落札箱

落札したのは、112体のぬいぐるみだったはずでした。けれど6箱目には、数えてはいけない“門”が混じっていたそうです。
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三つ目のしおり

三つ集めるだけの、普通のスタンプラリーでした。けれど二つ目の印だけは、誰も押していなかったそうです。
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十五時三十分の咳払い

送られていないはずの会議URLが、予定表に先に現れました。そこに書かれていたのは、ただ一文字の異変でした。
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三人目の旅程

4/22の「よい夫婦の日」に合わせた旅行アンケートへ答えただけでした。なのに印刷された旅程表は、二人ぶんでは終わらなかったのです。
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四袋目の水やり日

黒い袋は三つのはずでした。春になるころ、札のない四つ目だけが、まだ中で静かに湿っていたそうです。
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遊んだあとの返送票

祭りの景品を扱う問屋に、使い終わったはずの水鉄砲の的が、返送票つきで戻ってくるようになったそうです。
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所在欄の泥

場所の詳細が空白のまま残された古い発掘記録は、再発見されたあとでようやく“書き足された”そうです。
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まだ舞台を知らない靴

二千点を超える衣裳を詰める夜、まだ一度も海を越えていないはずの靴のつま先だけが、少しずつ削れていったそうです。
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喉と腹のあいだ

減塩を始めたはずの食卓で、塩だけが誰にも見えない口へ先に運ばれていたそうです。
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到着予定

延期されたはずの月計画で、まだ使われていない予定欄だけが先に社内を歩き始めたそうです。
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水面の下の介添え

三十四分のマッコウクジラの出産記録には、十一頭では足りない“介添え”が残っていたそうです。