二十四番目のおまとめ便

ウラシリ怪談

五月四日の夜、ある家庭で、翌日の予定を決めるために連休向けの記事を印刷したそうです。

紙の見出しには、「明日行ける」とありました。五月五日に参加できる催しを集めた一覧で、五連休の後半にまだ予定が決まっていない人向けの、ありふれた案内だったといいます。

母親は赤いペンで、子どもが喜びそうなものに丸をつけていきました。

五月四日と五日の二日間だけ開かれる本の催し。約四万冊の絵本や児童書。二十三種の生き物から一つを選ぶ投票企画。結果発表は九月十八日以降。

そこまでは、紙面の内容も画面と同じでした。

ただ、印刷された紙の下端にだけ、見覚えのない一行がありました。

「明日から来た方は、投票しないでください」

母親は、広告の切れ端が重なったのだと思ったそうです。けれど紙を裏返しても透けてはおらず、もう一度印刷しても、その一行だけは同じ場所に出たといいます。

翌日、親子は公園の噴水広場へ出かけました。

本の催しは賑わっていました。絵本の箱がいくつも並び、子どもたちが表紙をめくる音だけで、広場の空気が細かく震えていたそうです。四万冊もあると言われると、どこかに同じ本が何冊も紛れていそうで、母親は何度か同じ背表紙を見たような気がしたといいます。

子どもが一冊、薄い絵本を持ってきました。

表紙には何も描かれていません。値札も、題名もありません。ただ、内側の見返しに、小さな投票用紙が挟まっていました。

番号は、二十四。

その日、次に向かった水槽のある施設では、たしかに二十三種の生き物から好きなものを選ぶことになっていたそうです。入口にもそう書かれていました。投票台の札も一番から二十三番までで、数え間違いはありません。

けれど、子どもの手にある紙だけが、二十四番でした。

係の人に見せると、首をかしげられたそうです。そんな番号の用紙はない。持ち込みの紙では投票できない。そう言われて、母親は紙をしまいました。

その時、奥の大きな水槽で、魚たちが一斉に水面のほうへ逃げるように向きを変えたといいます。

水の中を、細長い影が通りました。

魚ではありませんでした。布のようにたるみ、風もないのに胴をくねらせている。連休中の別会場に飾られているはずの、二十五メートルの巨大なこいのぼりに似ていたそうです。

ただ、その影には目がありませんでした。

鱗のかわりに、小さな紙片がびっしり貼りついていて、その一枚一枚に「明日行ける」と印字されていたといいます。

子どもは黙って、二十四番の用紙を投票箱へ入れました。

入れてはいけないと止める前に、箱の投入口が、ほんの少し広がったそうです。紙が吸い込まれると、施設内の照明が一度だけ暗くなりました。暗くなったのは一瞬でしたが、明るさが戻った時、投票台の札が増えていました。

一番から二十三番。

そして、その横に、何も描かれていない札が一枚。

番号だけがありませんでした。

帰宅してから、母親は印刷した紙を捨てようとしました。すると、朝にはなかった丸印がひとつ増えていたそうです。

「九月十八日以降 結果発表」

その下に、小さな文字で、こうありました。

「二十四番は、まだ明日です」

子どもの持ち帰った無地の絵本は、数日後、内側から湿りはじめました。水に濡らした覚えはないのに、ページを開くたび、紙の奥で何かがゆっくり泳ぐような音がしたそうです。

母親はそれ以来、連休の記事を印刷しないと決めたといいます。

けれど、冷蔵庫に貼ってある五月のカレンダーだけは、今も五日の翌日がめくれないそうです。どれだけ剥がそうとしても、紙の端が水に浸したように重くなり、下からうっすら、まだ来ていない九月の白い余白が見えるのだといいます……そんな話を聞きました。

この怪談は、以下の記事をきっかけに生成されたフィクションです。

【GW2026】明日行けるイベント・おでかけ情報…5/5おまとめ便 | リセマム

【GW2026】明日行けるイベント・おでかけ情報…5/5おまとめ便 | リセマム
2026年のゴールデンウィーク後半は5月2日から6日までは土日と祝日(憲法記念日・みどりの日・こどもの日)、振替休日が続く5連休となる。リセマムのイベント記事から「明日行ける」教育イベント・おでかけ情報を紹介する。予定がまだ決まっていない場合は、参考にしてほしい。

 

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