ウラシリ怪談

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三つ目のしおり

三つ集めるだけの、普通のスタンプラリーでした。けれど二つ目の印だけは、誰も押していなかったそうです。
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十五時三十分の咳払い

送られていないはずの会議URLが、予定表に先に現れました。そこに書かれていたのは、ただ一文字の異変でした。
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三人目の旅程

4/22の「よい夫婦の日」に合わせた旅行アンケートへ答えただけでした。なのに印刷された旅程表は、二人ぶんでは終わらなかったのです。
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四袋目の水やり日

黒い袋は三つのはずでした。春になるころ、札のない四つ目だけが、まだ中で静かに湿っていたそうです。
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遊んだあとの返送票

祭りの景品を扱う問屋に、使い終わったはずの水鉄砲の的が、返送票つきで戻ってくるようになったそうです。
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所在欄の泥

場所の詳細が空白のまま残された古い発掘記録は、再発見されたあとでようやく“書き足された”そうです。
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まだ舞台を知らない靴

二千点を超える衣裳を詰める夜、まだ一度も海を越えていないはずの靴のつま先だけが、少しずつ削れていったそうです。
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喉と腹のあいだ

減塩を始めたはずの食卓で、塩だけが誰にも見えない口へ先に運ばれていたそうです。
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到着予定

延期されたはずの月計画で、まだ使われていない予定欄だけが先に社内を歩き始めたそうです。
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水面の下の介添え

三十四分のマッコウクジラの出産記録には、十一頭では足りない“介添え”が残っていたそうです。
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ひとり分の湯

閉店を告げた北の銭湯では、最後の客が帰ったあとも、毎晩きっちり“一人分”だけ湯が減っていたそうです。
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氷の内側の轍

三月と四月のあいだだけ、氷の下にもうひとつの轍が走る村があるそうです。
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地下一席

盗まれて溶かされたはずの優勝皿は、四か月後、いちばん近い地下に戻っていました。けれど裏面に増えていたのは、優勝者の名ではなく、次の置き場所を告げる一行だったそうです。
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となりの青いドラム

並べられた二つのドラムセット。そのうち片方は、もう誰も叩かないはずの新品でした。それでもあの夜、舞台の上では確かに「合図」が返ってきたそうです。
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受け身のいない床

追加キャラクターの動きが完成した夜から、誰もいない床が受け身を取りはじめたそうです。
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十三インチの隙間

閉じたはずの新しいノートの隙間に、もうひとつ細長い“部屋”が残っていたそうです。
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基準体の寝顔

全身の細胞を重ね合わせた先に、どの標本にも属していない“小さな寝顔”が残るそうです。
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百二十一番目の観測点

全国120地点のはずの花粉観測網に、三月七日だけ現れる“百二十一番目”があるそうです。