ウラシリ怪談

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到着予定

延期されたはずの月計画で、まだ使われていない予定欄だけが先に社内を歩き始めたそうです。
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水面の下の介添え

三十四分のマッコウクジラの出産記録には、十一頭では足りない“介添え”が残っていたそうです。
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ひとり分の湯

閉店を告げた北の銭湯では、最後の客が帰ったあとも、毎晩きっちり“一人分”だけ湯が減っていたそうです。
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氷の内側の轍

三月と四月のあいだだけ、氷の下にもうひとつの轍が走る村があるそうです。
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地下一席

盗まれて溶かされたはずの優勝皿は、四か月後、いちばん近い地下に戻っていました。けれど裏面に増えていたのは、優勝者の名ではなく、次の置き場所を告げる一行だったそうです。
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となりの青いドラム

並べられた二つのドラムセット。そのうち片方は、もう誰も叩かないはずの新品でした。それでもあの夜、舞台の上では確かに「合図」が返ってきたそうです。
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受け身のいない床

追加キャラクターの動きが完成した夜から、誰もいない床が受け身を取りはじめたそうです。
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十三インチの隙間

閉じたはずの新しいノートの隙間に、もうひとつ細長い“部屋”が残っていたそうです。
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基準体の寝顔

全身の細胞を重ね合わせた先に、どの標本にも属していない“小さな寝顔”が残るそうです。
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百二十一番目の観測点

全国120地点のはずの花粉観測網に、三月七日だけ現れる“百二十一番目”があるそうです。
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三十五年目の空席

三十五周年の夜、誰も座っていないはずの空席が、対戦台の向こうで静かにこちらを待っていたそうです。
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百十八段のひとり分

雨で中止になったはずの石段に、“座った跡”だけが百十八段ぶん残ったそうです。
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十センチの影

「窓は十センチ、レースで四分の一」——その“正しい換気”を守った日から、カーテンの向こうに欠けた人影が立つようになったそうです。
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封水の歯

排水口を“きれいにする手順”をなぞった夜から、穴の奥が先に磨きはじめたそうです。
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無料観覧の発掘面

展示ケースの下の床面にだけ“発掘区画”が浮き、角には「観覧無料」の札が置かれていたそうです。
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喉を借りるペルソナ

「助手役を演じてください」――その一言が、“座るはずのない誰か”の席を用意してしまったそうです。
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逆転しきれない影

1億5500万年の“逆転”を追う測定室で、反転しきれない横顔が窓の曇りに残ったそうです。
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救助用ロープがほどけるまで

無人のはずの帰還カプセルが、初めての海上回収で“誰かの痕”だけを持ち帰ったそうです。