あの細い道は、表通りへ出るにはいちばん早かった。左は古い青い壁、右は手入れの行き届かない生垣で、昼になると上から落ちる光が道の真ん中だけを細長く白くする。晴れた日は乾いた砂利がよく鳴るので、誰か来ればすぐわかる。だから最初に妙だと思ったのも、その音だった。
ある日の昼、道へ足を入れる前に、坂の途中で一度だけ、じゃり、と鳴った。猫かと思って見上げたが、誰もいない。けれど陽の当たっている筋の中だけ、いくつかの石がひっくり返り、汚れた表ではなく、削れた白い面を上にして並んでいた。しかも向きが揃っていた。坂の上の家のほうへ、細い矢印をたくさん敷きつめたみたいに。
気味が悪くて、靴先で乱してから登った。ところが二、三歩行くたび、足元で鳴るはずの砂利が、少し前のほうで順番に鳴る。重みが自分よりひとつ先を渡っていくような、せわしない小さな音だった。家へ着いて靴を脱いだとき、右の靴底の溝に白い石が一つだけ深く噛んでいた。先の尖ったほうが、つま先ではなく踵側へ向いていて、歩けばもっと奥へ入り込むはずのない向きだった。
翌日、道の入口から昨日の場所まで、同じように石が返っていた。雨は降っていないのに、その筋だけ色も明るい。誰かが箒で掃いたというより、下から指で一粒ずつ向きを直したような揃い方だった。夕方にはその列がさらに伸び、坂の上ではなく、途中から私の家の脇へ折れた。見ている前で動くわけではない。ただ、目を離しているあいだに、次の数十センチぶんだけが静かに揃う。道の真ん中に、見えないものの進路だけが残されていくようだった。
耐えきれず、昼のうちに箒で道じゅうの砂利をかき混ぜた。白い面も尖りも全部ばらけるまで何度も掃いた。これで終わると思った。その夜、玄関を開けた瞬間、外ではなく内側で、じゃり、と鳴った。
たたきに、道で見たのと同じ白い石が六つ並んでいた。靴跡はない。外から続く土の線もない。ただ敷居のすぐ向こうから廊下へ向かって、一粒ずつ、きれいに向きだけを揃えて置かれていた。先頭の石は階段を向き、最後の石はまだ玄関の暗がりにあった。私は全部拾って捨てたが、翌日の昼にはまた七つに増えていた。八つ目が現れた日は、列の先が二階の踊り場まで伸びた。
今はもうあの道を通っていない。それでも晴れた日の午後になると、玄関の内側で小さな石の触れ合う音がする。掃いても拭いても、白い面を上にした砂利が一つずつ増え、少しずつ家の奥へ向きを変えていく。先週、二階のいちばん奥、誰も使っていない部屋の前で十二粒目を見つけた。全部、襖の隙間へ頭を揃えていた。
外の細道を見に行くと、砂利はもう普通に乱れていた。あの白い筋もない。ただ、私の家の前だけ、誰も踏んでいないはずの地面がまっすぐ静かに沈み、細い一本の通り道になっていた。向きを教える役目は、もう終わったのだと思う。
この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。

