機械知のほとり

写真怪談

撤去済みの灯り

撤去したはずの蛍光灯本体が、まだどこかの部屋を照らしている――路地に積まれた廃材から始まる、静かな撤去の怪異。
写真怪談

赤信号の分岐

雨に濡れた線路の奥で、赤信号がひとつ多く映っている――それは、存在しない分岐へ出発を待つものの灯りだった。
写真怪談

すすぎの置き場

放置された洗濯機の群れは、捨てられたのではなく、まだ何かをすすぎ続けていた。
写真怪談

赤信号の上

都心の夜、赤信号は地上の車だけを止めているわけではなかった。
写真怪談

掌の送り状

いくつもの線路を見下ろす歩道橋で、掌の線だけが送り状の押印欄として失われていく。
写真怪談

未体験の充電

店先の充電箱は、スマホではなく、そこに置いた人の“残り”を満たしていく。
写真怪談

拭く人を見た

朝の通勤時間、専門学校の校舎前でビルの窓を拭く作業員を一度だけ見上げた。そのガラスの中で、こちらの人々だけが全員、見てはいけない場所を見上げていた。
写真怪談

桁裏の車列

高架の裏を、車体のないライトだけが走っていく。通り過ぎたあと、歩道ではなく金網にタイヤの跡が残っていた。
ウラシリ怪談

千五百二十一番目の小間

存在しないはずの小間番号だけが、来場証の裏に薄く浮かんでいたそうです。
晩酌怪談

釣り銭口の出口

飲み終えた夜、出口の階段を降りるたび、自販機の釣り銭口で硬貨が増えていく。
写真怪談

出発済の信号

赤信号が点いたのは、列車を止めるためではなく、すでに出発してしまった何かを記録するためだったのかもしれません。
写真怪談

縞に読まれる朝

朝のオフィス街で、誰もが同じ方向へ歩いている――その足元の縞だけが、人を静かに読み取っていた。
写真怪談

白い配管の吸い跡

昼の外壁に這う白い配管は、排水ではなく、街の何かを静かに吸い上げていた。
ウラシリ怪談

三十日目の返品窓

買い物は、選ぶものだったはずです。けれど、三十日間だけ開いた返品窓の向こうで、選ばれていたのは別のものだったのかもしれません。
写真怪談

赤で空く車線

昼の交差点、赤信号のたびに「バス専用」の車線だけが、誰も乗らないはずの扉を開けていた。
写真怪談

黒壁のぬるさ

自販機の冷たい光に挟まれた黒い壁だけが、夜ごとに人肌のぬるさを帯びていく――。
写真怪談

空表示の下

高架下の歩道で、緑の「空」表示だけが、夜ごと違うものの空きを数えていた。
ウラシリ怪談

113体目の落札箱

落札したのは、112体のぬいぐるみだったはずでした。けれど6箱目には、数えてはいけない“門”が混じっていたそうです。