街角の異変

写真怪談

欄干に分かれる人

駅前の歩道橋には、手すり越しにしか見えないものがある――しかも、見るたびに少しずつこちら側へ近づいてくる。
写真怪談

消火栓の乾いた輪

雨上がりの夜、赤い消火栓の周囲だけが乾いている。その円の中へ入った作業員は、自分の身体から何が失われているのかを知ることになる。
写真怪談

零番回線

繁華街の古い雑居ビルへ、とうに切れたはずの一本の回線が、今も夜ごと「呼出し」を送り続けている。
写真怪談

家ではない側

廃屋だと思っていた建物を反対側から見たとき、そこには玄関も窓も、人の暮らしもあった――だが、その家には「人が物に見える側」が存在していた。
写真怪談

植木のほうが下

水平なはずの住宅街で、家の中の「下」だけが、窓の外に立つ一株の植木へ向き始める。
写真怪談

横へ落ちる道

魚や草花を描いた車止めが並ぶ静かな遊歩道で、落ちる方向だけが少しずつ狂い始めます。
写真怪談

区域内の白い人

昼の街路、白いシートをかけた荷台のそばで、誰も乗せていないはずの赤いケースがひとつ多く鳴り始める。
写真怪談

階段の喉

青空の下にあるただの階段で、手すりが手首を噛み、壁の赤い落書きが“次の顔”を待っていた。
写真怪談

水溜まりの靴

雨の駅前に残されたのは、足跡ではなく、床そのものが歩き出すための目印だった。
写真怪談

四十五リットルの首

朝の歩道に並んでいた透明なゴミ袋。その中の首は、回収されるものではなく、まだ誰かを選んでいる途中だった。
写真怪談

四十五リットルの皮

雨の日の歩道に並ぶ白い袋。その中身は、ごみではなく、誰かから少しずつ剥がれ落ちたものだった。
写真怪談

駐輪場の余白

雑居ビルかマンションかも分からない古い建物の一階で、誰も停めていないはずの場所だけが、少しずつ埋まっていく。
写真怪談

赤信号の上

都心の夜、赤信号は地上の車だけを止めているわけではなかった。
写真怪談

三人目の乾き

雨の夜、赤い傘と白い傘の横にだけ、濡れない場所がついてきていた。
写真怪談

桁裏の車列

高架の裏を、車体のないライトだけが走っていく。通り過ぎたあと、歩道ではなく金網にタイヤの跡が残っていた。
ウラシリ怪談

六万軒目の搭乗口

欠航の空港で配られた整理券、その六万枚目だけが、どこにも飛ばない搭乗口を示していたそうです。
写真怪談

軒下の先客

朝の開店準備中、まだ暖簾も出ていない店先に、“最初の客”の痕跡だけが残っていた。
写真怪談

橋裏の水位札

橋の下に貼られた小さな水位札は、ただの管理表示ではありませんでした。水面に残る線と、写らないはずの足跡が、少しずつこちら岸へ近づいてきます。