街角の異変

写真怪談

橋裏の水位札

橋の下に貼られた小さな水位札は、ただの管理表示ではありませんでした。水面に残る線と、写らないはずの足跡が、少しずつこちら岸へ近づいてきます。
写真怪談

縞に読まれる朝

朝のオフィス街で、誰もが同じ方向へ歩いている――その足元の縞だけが、人を静かに読み取っていた。
写真怪談

白い配管の吸い跡

昼の外壁に這う白い配管は、排水ではなく、街の何かを静かに吸い上げていた。
晩酌怪談

酒ケーキの列

商店街の片隅に揺れる「酒ケーキ」ののぼり——試食を断っただけなのに、甘い怪異は律儀に追いかけてくる。
写真怪談

剥がれない貼り札

路地の植え込みにある、スプレー缶で作られた小さな鳥居。そこに貼られた無数のステッカーは、剥がれているのではなく、誰かを選んで戻ってくるのかもしれません。
写真怪談

赤で空く車線

昼の交差点、赤信号のたびに「バス専用」の車線だけが、誰も乗らないはずの扉を開けていた。
ウラシリ怪談

九条だけが折れている

5万人が去ったあとの広場で、清掃員が見つけたのは、地面の下に折りたたまれていた“第九条”でした。
写真怪談

黒壁のぬるさ

自販機の冷たい光に挟まれた黒い壁だけが、夜ごとに人肌のぬるさを帯びていく――。
写真怪談

赤い支柱の借家

夕方の路地に立つ小さな巣箱は、鳥ではなく、部屋から抜け落ちた“居た感じ”を少しずつ借りていた。
写真怪談

空表示の下

高架下の歩道で、緑の「空」表示だけが、夜ごと違うものの空きを数えていた。
写真怪談

積二トンの夜

夜の商店街で、何も載せていないはずの道だけが、少しずつ重くなっていく。
写真怪談

歩幅の返却口

横断歩道へ出るだけの短い隙間で、消えた一歩はどこへ返されるのか。
写真怪談

砂の列、停車しないもの

バス停の脇にできた小さなアリの巣。出入りしているのは、たった三匹だけ――それなのに、待つ人が多い日ほど、砂の筋は少しずつ太くなっていった。
写真怪談

傘の内側の雨

晴れた昼の路地で、なぜか傘は“外側”ではなく“内側”から濡れはじめる――その湿りが上へ這いあがったとき、誰も見ていない通路がもう一段、頭上に重なっていました。
写真怪談

石の向き

晴れた昼だけ妙に静かなあの細道で、足元の小石は、誰のために向きをそろえていたのでしょうか。
写真怪談

二人乗りの欄

春から厳しくなった自転車の取り締まり。その夜、警官が切った一枚の紙には、誰も見ていない「もう一人」の違反が残っていた。
写真怪談

定時の遊具

毎日同じ時間、同じ遊具に座って中国語で電話をかける男。近所では見慣れた光景だったはずなのに、誰もいない日にだけ“通話の続き”が始まりました。
写真怪談

下りきらない昼

昼休みの公園で、子どもの遊具にしゃがみ込む背広の男を見かけた。その姿は翌日も変わらなかったが、先に沈み始めたのは、本人ではなく影のほうだった。