構造の異常

写真怪談

門の歯列

夜の中庭にある古い煉瓦門には、閉館後だけ守られる奇妙な通行規則があった。それを破った男の身体で、門の補修が始まる。
写真怪談

屋上の串

駅前の古い雑居ビルで、何を飲んでも血の味がする一席。その真上をたどった屋上には、図面にない一本の竿が突き刺さっていた。
写真怪談

空荷の鉤

青空の下、空荷のフックは動いていない。それなのに、人の体だけが吊り上げられていく――クレーン現場に残された螺旋の痕の話です。
写真怪談

シャッターの隙間

半分だけ下りたシャッターの奥で、荷物は“積まれている”のではなく、少しずつ高さを預けていた。
ウラシリ怪談

1995の空席

金利を決めるはずの会議室で、誰のものでもない椅子だけが、先に着席を待っていたそうです。
写真怪談

桁裏の車列

高架の裏を、車体のないライトだけが走っていく。通り過ぎたあと、歩道ではなく金網にタイヤの跡が残っていた。
写真怪談

鋲の雨宿り

大雨の交差点、緑の柱に並ぶ鋲だけが、通り過ぎた人の重さを覚えていました。
写真怪談

白い柵の空白

白い非常階段を見上げたとき、そこにいたのは人影ではなく、人が抜き取られたような“空白”だった。
写真怪談

吹き抜けの内側

閉館後の吹き抜けで、一灯だけ遅れて点く理由を知ってしまった人は、もう真下を歩けなくなります。
写真怪談

外壁の窓

トンネルの中を走るはずの電車が、ある日から外壁のほうに窓を並べ始めました。
写真怪談

継ぎ輪

昼の路地で、電気の唸りが二拍だけ止むたび、外壁の配管に“ありえない継ぎ目”がひとつずつ増えていく。
ウラシリ怪談

十三インチの隙間

閉じたはずの新しいノートの隙間に、もうひとつ細長い“部屋”が残っていたそうです。
写真怪談

停車位置

閉業したガソリンスタンドの裏窓に、何日も同じ位置に立ち続ける人影があった。誰も入れないはずの場所に見えるそれは、やがて別の窓へ移ってくる。
写真怪談

開口角

毎朝わずかに開いている消火器カバー。壊れていないのに閉まりきらないその隙間は、何かの出入りに合わせて少しずつ広がっていた。
写真怪談

継ぎ目へ続く通路

黒い外壁に挟まれた裏通路の点検写真――ただそれだけのはずが、画面の中の道は「次の瞬間」から伸び始めた。
写真怪談

筋交いの×

車庫の屋根を支えるはずの筋交いの「×」が、ある日から“記録”と“名前”の上にだけ、やけに正確に重なりはじめた。
写真怪談

鉄骨に噛まれた街灯

高架化工事の鉄骨が並ぶ踏切脇の道で、赤い警報灯が消えない“時間”があると気づいた夜の話。
写真怪談

七番打席のぬるい缶

開場前の無人の打席で、ぬるい缶だけが現実の温度を裏切る――七番打席に戻れない“最後の一分”の話。