駐車場として使うために整地された空き地で、地面を平らにしたはずの翌朝、中央に土の山ができていた。周囲は砕石を敷いて転圧したばかりで、隣家のブロック塀に沿った部分まで均一に仕上がっている。その中で、茶色い土だけが両手で寄せ集めたように盛り上がっていた。
量にすれば、一輪車の半分にも満たなかったという。作業員がスコップですくうと、表面の砕石とは違い、少し湿った細かい土だった。誰かが作業の途中で残したものだろうと、その日は袋へ入れて現場の外へ運び出した。
翌朝、同じ場所にまた山があった。
前日より大きいわけでも、小さいわけでもなかった。位置もほとんど同じだったため、現場監督は前日に土を片づけた作業員へ確認したが、袋へ入れて処分したことは間違いなかった。夜間に資材を運び込んだ業者もなく、地面には靴跡も車輪の跡も残っていなかった。
念のため、その日も土を取り除いた。盛り上がっていた部分をレーキで均し、周囲と同じ高さまで転圧するところを三人で確認した。最後に中心へ小さな印を付け、翌朝まで触れないことにした。
三日目、印の上に土の山ができていた。
そこで、下から土が押し上がっているのではないかという話になった。古い配管跡や動物の巣穴があれば、地面が崩れて土が動くことはある。原因を確かめるため、山を取り除いたあと、作業員はその場所へ青いシートを敷いた。
シートの四隅には重しを置き、中心には油性ペンで十字を書いた。もし下から土が出るなら、シートが持ち上がるか、どこかが破れるはずだった。周囲も掃いて、細かな土が残っていないことまで確認したという。
翌朝、青いシートの真ん中に土の山が載っていた。
四隅の重しは動いていなかった。シートをめくっても穴はなく、裏側にも土は付いていない。十字の印は山の真下に残っており、その線だけが土の重みでわずかにシートへ食い込んでいた。
その土を量ると十九キロ弱あった。前日に処分したものとほぼ同じくらいだったが、正確な重量を記録していなかったため比較はできなかった。今度は土をすべて容器へ移し、シートの中央をもう一度平らにして、昼まで様子を見ることにした。
正午には何もなかった。午後二時にも、シートは青いままだった。ところが三時過ぎ、資材を取りに行って戻った作業員が見ると、中央に握り拳ほどの土が載っていた。
周囲には、そこまで続く土の筋がなかった。風で飛んできたなら薄く散るはずだが、土は低い円錐形にまとまっている。作業員たちは少し離れた場所で仕事を続け、ときどきシートを確認した。
四時には、拳二つ分ほどになっていた。
五時前には、朝見たものとほぼ同じ大きさになっていた。
誰も、増える瞬間だけは見ていなかった。
翌日、作業員たちは青いシートの周囲を詳しく調べた。すると、それまで気づかなかった変化があった。シートから一メートルほどの範囲だけ、地面の色が少し白っぽくなっていた。
細かな土が減り、大きめの砕石だけが表面に残っていたのである。ただし、そこから十九キロもの土を抜き取ったなら、地面には明らかな窪みができるはずだった。水準器を当てても高さは変わらず、転圧した面は平らなままだった。
試しに周囲の砕石を別の場所から足し、もう一度転圧した。それでも翌朝になると、シートの中央には同じ程度の山ができていた。周囲はまた少しだけ粗くなり、追加したはずの細かな粒が見当たらなくなっていた。
現場監督は工事を一日止め、その場所を掘らせた。直径一メートルほど、深さも人の膝を越えるところまで掘ったが、古い基礎も配管も埋設物も出なかった。地層に不自然な空洞もなく、掘り出した土の量も計算上おかしくなかったという。
穴は新しい砕石で埋め戻され、何度も転圧された。その上に、また青いシートを敷いた。ここまでやれば、少なくとも地面の下から何かが出ているという可能性は消せるはずだった。
翌朝、土の山は戻っていた。
その時点で、現場監督は原因を調べることをやめたという。工期があり、駐車場を完成させなければならなかった。山の土だけをいくつかの密閉容器へ分け、念のため試料として残し、青いシートごと現場から撤去した。
地面には砕石を追加し、そのまま舗装工事が行われた。アスファルトは正常に固まり、問題の場所にも膨らみや陥没は起きなかった。完成検査にも異常はなく、その駐車場は予定どおり使われるようになった。
しばらくして、土の試料を預けていた業者から連絡があった。
成分そのものに、特別なものは見つからなかったという。砂や粘土質の粒、細かな植物片などが混じった、ごく普通の土だった。ただ、担当者が一つだけ妙なことを言った。
検査のために容器を振ったあと、残った土を平らにして棚へ置いた。翌朝見ると、土が容器の中央へ集まり、小さな山になっていたという。
担当者は容器を軽く叩き、もう一度平らにした。翌日も同じ形になった。試料は六つに分けてあったが、確認すると六つとも、容器の底の中央に小さな円錐形の山を作っていた。
密閉した蓋に異常はなかった。重量も変化していなかった。つまり土が増えたのではなく、容器の中にあるものだけで、毎晩同じ形へ戻っているらしかった。
一つの容器は、確認のため逆さにして一晩置かれた。
翌朝、土は蓋側には残っていなかった。すべて底へ落ち、その中央に山を作っていたという。振った痕跡も、容器の側面を滑り落ちた跡もなく、ガラスの底の周囲だけが輪のようにきれいに空いていた。
試料はその後処分することになったが、一つだけ、施工会社が引き取ったそうだ。現場監督が、何も残さないほうがかえって気味が悪いと言ったためだった。
今もその容器は、事務所の資材棚にあるという。
中身はほんの数百グラムしかない。それでも棚を掃除するときに容器を動かし、土が崩れて平らになると、翌朝には必ず中央へ集まっている。高さも底の直径も、毎回ほとんど変わらない。
ラベルには現場名と採取日、その下に短くこう書かれている。
「中央部盛土 用途不明」
駐車場のほうでは、それ以来、目立った異常は起きていない。ただ、工事に関わった作業員の一人は、完成したあとも中央付近には車を停めなかったという。
理由を聞かれると、あの土がどこから来たのかではなく、別のことが気になるのだと答えたそうだ。
平らな場所に戻しても、閉じ込めても、離れた場所へ運んでも。
あの土は、どうして自分の「中央」が分かるのか。
この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。

