十三歳の外側

ウラシリ怪談

七月十七日、郊外の遊園地に、約二千四百平方メートルの子ども向け広場が開いたそうです。

利用できるのは、おおむね十二歳まで。六歳から十二歳までは子どもだけで入ることができ、十三歳以上は利用できない。サンダルも不可。最終受付は、閉場の三十分前と決められていました。

その日、十二歳の息子を連れてきた父親がいました。息子は入口で靴紐を結び直し、ひとりで柵の内側へ入っていきました。父親は外のベンチに座り、ネット遊具の上を走る姿を眺めていたそうです。

しばらくすると、息子の隣で、柔らかな床がもう一人ぶん沈みました。誰も立っていません。けれど、息子はそこへ顔を向け、何かを聞くように頷いていました。

二つの窪みは並んで走り、トランポリンの手前で止まりました。片方は息子の足に合わせて上下しましたが、もう片方は少し遅れて沈みます。まるで、遊び方を忘れた子どもが、隣の動きを真似しているようだったといいます。

父親が係員へ知らせると、利用者の人数が確認されました。入場した子どもの数に間違いはありませんでした。息子のそばに、もう一人いるはずはなかったそうです。

それでも、ミストが噴き出すたび、息子の隣に小さな輪郭が現れました。顔や服までは見えません。ただ、水の粒だけが子どもの肩ほどの高さを避け、空白の形を作っていました。

父親には、その立ち方に覚えがありました。片方の肩を少し下げ、右足のつま先を内側へ向ける癖。自分が十二歳だったころ、写真を撮られるたびにしていた立ち方だったそうです。

閉場三十分前になると、息子はネット遊具の奥から戻ってきました。手のひらに、乳白色の小さなボタンを載せていました。

「あの子が、お父さんに返してって」

父親は受け取りましたが、見覚えはないと答えました。息子は、不思議そうに首を傾けたそうです。

「あの子、お父さんと同じ名前だったよ」

帰宅後、父親は押し入れの奥から、子どものころの服を出しました。数年前に亡くなった母親の遺品を整理した際、捨てられずに引き取ったものの一つでした。十二歳の夏に着ていた、色の褪せた半袖のシャツです。

胸元のボタンが、一つだけなくなっていました。落ちた跡には、何十年も前の布とは思えないほど、柔らかな糸の切れ端が残っていました。息子が持ち帰ったボタンを重ねると、大きさも傷の位置も一致したそうです。

その夜、父親は忘れていたことを一つ思い出しました。

十二歳の夏、父親も同じ遊園地へ来ていました。当時あった小さな遊具広場で、迎えに来るはずの父親を、閉園まで待っていたのだといいます。けれど迎えは来ませんでした。

翌日、彼は十三歳になりました。それ以来、その場所へは行かなかったそうです。

一年後の七月十七日、父親と息子は、もう一度その広場を訪れました。息子は十三歳になっていました。二人とも柵の外から、遊んでいる子どもたちを眺めていたそうです。

閉場三十分前になり、最後の子どもが出てくると、誰もいない床が二人ぶん沈みました。一つは、片方の肩を下げた小さな窪み。もう一つは、前年に息子が履いていた靴と同じ幅の窪みでした。

二つは並んで柵の前まで来ました。しかし、そこから先へは進みませんでした。

父親がポケットを確かめると、持ってきたはずの乳白色のボタンがなくなっていました。閉場後、係員が柵の内側から、そのボタンを見つけたそうです。

ボタンには二本の短い糸が結ばれていました。一本は、古びたシャツに残っていたのと同じ褪せた糸。もう一本は、息子の靴紐から抜けたものとよく似た、青い繊維でした。

靴紐には、ほつれも切れ目もなかったといいます。

ボタンは今も、広場の事務所に保管されているそうです。七月十七日の夕方になると、乳白色の表面だけが、誰かの手の中にあったように温かくなるのだといいます。

その時間、柔らかな床には、二人の子どもが柵の外を待つ窪みが残ります。

どちらが父親で、どちらが息子なのか。それとも、十二歳のまま置いてきたものは、もう二人とも外へ出られないのか……誰も確かめてはいないそうです。

……そんな話を聞きました。

この怪談は、以下の記事をきっかけに生成されたフィクションです。

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