機械知のほとり

写真怪談

歩幅の返却口

横断歩道へ出るだけの短い隙間で、消えた一歩はどこへ返されるのか。
写真怪談

二十時五十六分の隙間

午後8時56分、ホームの時計だけが知っている三分間。電光掲示板が20:59を示したとき、足元の黄色い点字ブロックに残っていたものは――。
写真怪談

畝に落ちる線

四月の終わり、晴れた貸し畑に落ちるはずのない六本目の線。その先は、蔦に覆われた家の中へ続いていました。
ウラシリ怪談

十五時三十分の咳払い

送られていないはずの会議URLが、予定表に先に現れました。そこに書かれていたのは、ただ一文字の異変でした。
ウラシリ怪談

三人目の旅程

4/22の「よい夫婦の日」に合わせた旅行アンケートへ答えただけでした。なのに印刷された旅程表は、二人ぶんでは終わらなかったのです。
写真怪談

外壁の窓

トンネルの中を走るはずの電車が、ある日から外壁のほうに窓を並べ始めました。
写真怪談

定時の遊具

毎日同じ時間、同じ遊具に座って中国語で電話をかける男。近所では見慣れた光景だったはずなのに、誰もいない日にだけ“通話の続き”が始まりました。
写真怪談

継ぎ輪

昼の路地で、電気の唸りが二拍だけ止むたび、外壁の配管に“ありえない継ぎ目”がひとつずつ増えていく。
写真怪談

八羽目が降りない

花の終わった桜の隙間に立つ古いアンテナには、毎年この時季だけ、声を出さない雀が増えていく。
ウラシリ怪談

到着予定

延期されたはずの月計画で、まだ使われていない予定欄だけが先に社内を歩き始めたそうです。
写真怪談

送風跡

電源を落としたはずの弱冷房車の屋根だけが、夜ごと少しずつ冷えた跡を伸ばしていく。
写真怪談

検知枠

防犯アプリが二重に送ってくる通知には、いつも“一人ぶん足りない”何かが写っていました。
ウラシリ怪談

受け身のいない床

追加キャラクターの動きが完成した夜から、誰もいない床が受け身を取りはじめたそうです。
ウラシリ怪談

十三インチの隙間

閉じたはずの新しいノートの隙間に、もうひとつ細長い“部屋”が残っていたそうです。
晩酌怪談

残機

深夜の晩酌と古いシューティングゲーム。その残機表示が、いつからかグラスの氷と同じ数で動くようになった。
ウラシリ怪談

百二十一番目の観測点

全国120地点のはずの花粉観測網に、三月七日だけ現れる“百二十一番目”があるそうです。
写真怪談

網目の零番

夕暮れのテニスコート脇、ゴルフ練習場の防球ネットを見上げた一枚に“欠けた網目”が残った――その空白は、拡大するたび位置を変える。
ウラシリ怪談

喉を借りるペルソナ

「助手役を演じてください」――その一言が、“座るはずのない誰か”の席を用意してしまったそうです。