植物の怪異

写真怪談

替皮

境内の片隅に置かれた、片目の欠けた石の蛙と二匹の亀。冬の最初に供えられる柚子には、寺の者が決して早く片づけない理由がありました。
写真怪談

花芯

花見客で賑わう桜並木で、落ちた花びらの“芯”だけが揃って赤くなる区間がある。冗談のような迷信を調べた先で、春の道が何を抱えたまま咲いているのかを知ってしまう。
ウラシリ怪談

百二十一番目の観測点

全国120地点のはずの花粉観測網に、三月七日だけ現れる“百二十一番目”があるそうです。
写真怪談

蔦壁の結び目

蔦に覆われた外壁と、頭上を縫う電線——毎朝見ていた路地で、空が「欠けはじめる」。
写真怪談

節の数が合わない

中庭の一本の木に空いた「丸い穴」。夕方になると、そこから“息”が漏れはじめた——。
写真怪談

一輪車の戻り跡

住宅地の裏の貸し畑で、白い防虫ネットの弧が“数えたぶんだけ”増えていく。
写真怪談

植え込みの青い星が数える

クリスマスの植え込みに這う青い光――その点滅が「戻ってこなかった数」を覚えているとしたら。
ウラシリ怪談

灯りのないツリー

熱源のないツリーが燃えた夜…翌朝の庭には十一個だけ飾りが戻っていたそうです…
写真怪談

剪定後の空巣

撤去されたはずの烏の巣は、なくなったのではなく――「空」に移っただけだった。
写真怪談

欠番の区画

入口の隙間から覗いただけの冬のシェア畑で、“欠番の区画”がこちらを登録しにきた――。
写真怪談

昼のツリーに吊られているもの

冬の広場に立つクリスマスツリー──真昼の青空の下、その赤い雫形のオーナメントだけは、まだ起きていないはずの「落ちてくる誰か」の姿を映していました。
写真怪談

大開運の木肌

街路樹の名札に紛れて、ひとつだけ黄色い「大開運」のお守りが括りつけられた木がある——その木肌に刻まれていくものを、僕はなるべく見ないようにしている。
写真怪談

山門の真ん中を歩くな

秋になると、誰も寺の山門の真ん中をくぐらない――分厚い銀杏の落ち葉の布団の下には、今もひとり分の重さが眠っているからだという。
写真怪談

満開の通路に立つ人

商店街の片隅にある小さな花屋。その通路の真ん中だけは、夜七時を過ぎると「空いていてはいけない場所」になるらしい──。
写真怪談

根の帳面(ねのちょうめん)

割れた塀の“中”は、夜になると数を数える——黄葉の枚数と人の数が揃った朝、町は静かにひとりぶん軽くなる。
写真怪談

風の名簿

墓地の棕櫚は、風が吹くたびに“名簿”をめくる。呼び出し音のない着信は、今晩、誰に届くのか——。
写真怪談

帰り火の外灯

夕暮れ前から点る、庭の皿灯。傘に映った“顔”は、家の中ではなく、外のどこかへ帰ろうとしていた——。
晩酌怪談

麦穂の影、揺れる晩酌

カウンター越しに揺れる麦穂。その影が、ビールの泡よりも長く残っていた――。