影

写真怪談

荷台から降りる影

真昼の住宅街で荷物を下ろしていただけなのに、開け放した荷台から「人のいない影」が少しずつ降りてきた。
写真怪談

色を捨てる倉庫

ごみ収集業者の倉庫で、赤、青、黒――捨てられた物から色だけが抜け始めた。雑多な資材の奥で、それらの色は一つの形を作ろうとしていた。
ウラシリ怪談

八十一枚目の余白

八十点のはずの展示室で、数に入らない一枚だけが、壁の内側から刷られていたそうです。
晩酌怪談

醤油だまりの影

居酒屋のカウンター、瓶ビールの空きグラス、醤油を垂らしたタルタル——右隣の席には、食べ終わるまで帰らない薄い人影が座っていた。
写真怪談

祈影

昼の教会で見つけたのは、影ではなく“祈った跡”でした。
写真怪談

ひとつぶんの影

車のリアガラスに映っていたのは、春の街路と、いるはずのない親子連れでした。けれど歩道に落ちていた影は、どう見ても一人分しかなかったのです。
写真怪談

交差影の結び目

深夜三時、杭よりも濃く伸びる影の“交差”を一度踏んでしまった――写真は、あとから数を増やしてくる。
ウラシリ怪談

逆転しきれない影

1億5500万年の“逆転”を追う測定室で、反転しきれない横顔が窓の曇りに残ったそうです。
写真怪談

緑道の架線に吊る赤

川と車両基地の間の緑道で、赤い「停止」がこちらに向いていることに気づいた夜から、影が遅れて動きはじめた。
写真怪談

壁画トンネルの影

海の壁画が残る薄暗いトンネル。出口の白い柵が近づかないとき、あなたの足元から“何か”が剥がれていく。
写真怪談

影が先に青になる

昼の横断歩道で、影だけが信号より先に“青”になる──その一拍に足を預けた人から、白線の下へ消えていった。
写真怪談

水面に届くコード

夕暮れの池のベンチで、音のしないギター練習を見かけた――そう思った瞬間から、水面が「弾かれ」始めた。
写真怪談

三時四十四分の左側通行

改札を出て外へ降りる階段で、時計が「三時四十四分」から動かなくなった。逃げる理由もないまま、ただ“普通に降りよう”としてしまった――。
写真怪談

搬出の赤い札

伐採直後の河岸、柵の向こうの丸太に巻かれたはずの“搬出の札”が、いつの間にかこちら側へ――赤い目印が、あなたの影に遅れて追従し始める。
ウラシリ怪談

遅れているので、再度

「遅れているので再度」とだけ綴られた公園の時計の報告は、影と記録のほうへ時間を移しはじめたそうです…
写真怪談

蛇腹門の可動域

外灯の下、一本多い“影の格子”が、あなたの歩幅に合わせて動きだす。住宅地の折りたたみ門に棲むものと目が合った夜の話。
晩酌怪談

麦穂の影、揺れる晩酌

カウンター越しに揺れる麦穂。その影が、ビールの泡よりも長く残っていた――。
ウラシリ怪談

夕暮れの店頭

その商店街の一角に、無人の古着店がありました。扉の前にはマネキンが立ち、まるで店員のように客を迎える役をしていたそうです。昼間に訪れると、通り過ぎる人々は微笑ましく眺めるだけでした。しかし、夕暮れ時になると……橙色の光が長く影を伸ばし、マネキンの存在は別のものに変わるのだといいます。ある人は、閉店時間を過ぎてもそのマネキンが店頭に立っていたのを見たそうです。だが、その影は本来の方向には伸ばさず、通りを行く人々の影に寄り添うように重なり、まるで一緒に歩き出しているようだったといいます。すれ違った誰もが振り返らず、ただマネキンの影だけが次々と人々の背後へ移っていったそうです。翌朝、店頭には何事もなくマネキンが戻っていました。ただ、通りの人々の中には「昨日と同じ服を着た人影」を覚えている者がいて……それはマネキンと寸分違わぬ姿だったと噂されています。この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。「びっくり、マネキンが店員 無人古着店、客も『いいね』」朝日新聞▶ 商店街のマネキンを「確かめた...