時のひずみ

写真怪談

硝子の行列

駅前の雪像を撮った写真が、いつの間にか幼い日のアルバムに混ざっている。ガラスの向こうで“列”がつながり始めた。
写真怪談

こちら向き

吹雪の細道で、カーブミラーだけが“こちら向き”に光った夜――帰り道は、同じ場所へ何度でも返される。
写真怪談

昼穴(ひるあな)の雪

雪の午後、ほんの数分だけ雲が裂けて太陽がのぞいた――その“白”を見た人から、午後が削れていく。
写真怪談

赤信号の棚

雪の夜、街の大通りに沿う公園を横切る交差点で見つけた“手のひらサイズの雪だるま”――それが増えるほど、赤信号は長くなっていった。
写真怪談

雪の下の零番改札

稼働中の田舎駅で、誰もいないのに改札が鳴る——雪が深い夜だけ現れる「零番線」は、どこへ繋がっているのか。
写真怪談

元旦営業の棚卸し

町外れの住宅街で、元旦から開いているスーパーを見つけた――ただの珍しさのはずが、「一月一日」そのものが棚卸しされていく。
ウラシリ怪談

年越しそばの録音

管理室で年越しそばを食べていたはずなのに、録音だけが“二人分”すすり続ける夜があるそうです…
ウラシリ怪談

七時十八分の道路影響

帰省前に確認したはずが、時刻のほうに先に確認されてしまったようです…
写真怪談

近道々

年末の露店通り、「駅近道→」の下を進むたび、案内の文字だけが増えていく。
写真怪談

逆向きの踏切は、終電のあとに開く

終電後の近道で、逆向きの踏切に入った――“向こう側”は、道ではなく順番待ちだった。
晩酌怪談

忘年の席数

駅前の居酒屋、普通の忘年会の写真。顔は写っていないのに、翌朝から「人数」だけが合わなくなる。
写真怪談

宛名のないプレゼント

クリスマスが終わる頃、駅前のプレゼント箱に“宛名”が浮かぶ夜がある。読んだ人は少し楽になって、代わりに何かを忘れていく。
写真怪談

網目の出口と青いダウン

雨上がりの明け方、公園の出口にだけ“横断できない道路”が現れる——石畳の網目に引っかかった足跡は、青いダウンに剥がされていく。
写真怪談

ひとつ上の段にいる

交差するエスカレーターには、“ひとつ上”へ引き上げられる影がある――その場所を通るたび、誰かが少しずつ減っていく。
写真怪談

頭上のループ

夕焼けの高架下、音の消えた抜け道で“頭上”がゆっくりと呼吸を始める――。
写真怪談

スピードをおとす勇気

低い天井に押し潰されるような歩道橋で――「スピードをおとす勇気が身を守る」の文字だけが、やけに生々しく迫ってくる夜がある。
写真怪談

電線の網にぶら下がる夕方

夕方の路地で見上げた電線は、いつから「網」になったのだろう──青い点滅が始まってから、帰り道が終わらなくなった。
写真怪談

白鳥ボートの「空席」

整然と並ぶ貸しボートの中で、いつも“空席”になる一隻だけが、なぜか濡れている——その湖は、水面の裏側に座るべき客を用意していた。