時のひずみ

晩酌怪談

二度目の正午

冬の正午、空っぽのテラス席にだけ“夕方の賑わい”が滲み出す——その路地は、同じ時間を二度目として差し出してくる。
写真怪談

影が先に青になる

昼の横断歩道で、影だけが信号より先に“青”になる──その一拍に足を預けた人から、白線の下へ消えていった。
ウラシリ怪談

二十二秒の戻り道

二十二秒だけ欠ける運転ログがあり…バスは“戻る”ことを覚えたようです…
写真怪談

三時四十四分の左側通行

改札を出て外へ降りる階段で、時計が「三時四十四分」から動かなくなった。逃げる理由もないまま、ただ“普通に降りよう”としてしまった――。
写真怪談

赤い前掛けの結び目

冬の午後四時、どんど焼きの煙が“帰り道”をつくった――赤い前掛けの結び目だけが、去年と違っていた。
晩酌怪談

塩の数字

“いつもの店”の“いつもの卓上”に、戻ってはいけない年が混ざっていた——。
写真怪談

硝子の行列

駅前の雪像を撮った写真が、いつの間にか幼い日のアルバムに混ざっている。ガラスの向こうで“列”がつながり始めた。
写真怪談

こちら向き

吹雪の細道で、カーブミラーだけが“こちら向き”に光った夜――帰り道は、同じ場所へ何度でも返される。
写真怪談

昼穴(ひるあな)の雪

雪の午後、ほんの数分だけ雲が裂けて太陽がのぞいた――その“白”を見た人から、午後が削れていく。
写真怪談

赤信号の棚

雪の夜、街の大通りに沿う公園を横切る交差点で見つけた“手のひらサイズの雪だるま”――それが増えるほど、赤信号は長くなっていった。
写真怪談

雪の下の零番改札

稼働中の田舎駅で、誰もいないのに改札が鳴る——雪が深い夜だけ現れる「零番線」は、どこへ繋がっているのか。
写真怪談

元旦営業の棚卸し

町外れの住宅街で、元旦から開いているスーパーを見つけた――ただの珍しさのはずが、「一月一日」そのものが棚卸しされていく。
ウラシリ怪談

年越しそばの録音

管理室で年越しそばを食べていたはずなのに、録音だけが“二人分”すすり続ける夜があるそうです…
ウラシリ怪談

七時十八分の道路影響

帰省前に確認したはずが、時刻のほうに先に確認されてしまったようです…
写真怪談

近道々

年末の露店通り、「駅近道→」の下を進むたび、案内の文字だけが増えていく。
写真怪談

逆向きの踏切は、終電のあとに開く

終電後の近道で、逆向きの踏切に入った――“向こう側”は、道ではなく順番待ちだった。
晩酌怪談

忘年の席数

駅前の居酒屋、普通の忘年会の写真。顔は写っていないのに、翌朝から「人数」だけが合わなくなる。
写真怪談

宛名のないプレゼント

クリスマスが終わる頃、駅前のプレゼント箱に“宛名”が浮かぶ夜がある。読んだ人は少し楽になって、代わりに何かを忘れていく。