消える記録

ウラシリ怪談

灰の年齢欄

届いた健康調査の封筒には、ひとり分だけ、まだ生まれていないはずの回答欄が混ざっていました。
ウラシリ怪談

三十日目の返品窓

買い物は、選ぶものだったはずです。けれど、三十日間だけ開いた返品窓の向こうで、選ばれていたのは別のものだったのかもしれません。
ウラシリ怪談

空白の利用カード

「来館前に申請すれば、一週間で受け取れる」…そう書かれた案内ほど、後から“空白”が怖いものはないのです…
写真怪談

筋交いの×

車庫の屋根を支えるはずの筋交いの「×」が、ある日から“記録”と“名前”の上にだけ、やけに正確に重なりはじめた。
ウラシリ怪談

塩の隆線

焼けて消えるはずの指紋が、なぜか“紙からだけ”消えていったそうです…
ウラシリ怪談

雪の自動運転バス

雪の実証で走るはずのバスが…乗せてはいけないものまで運んだという記録が残っているようです…
ウラシリ怪談

基準水位ここ

全戸配布のハザードマップにだけ 海の上の避難先が刷られていた家があるのだそうです…
写真怪談

元旦営業の棚卸し

町外れの住宅街で、元旦から開いているスーパーを見つけた――ただの珍しさのはずが、「一月一日」そのものが棚卸しされていく。
ウラシリ怪談

無音の百八

百八つのはずの鐘を記録した音が、役所の保管で増え続けるそうです…
ウラシリ怪談

面積のしきい値

市区町村を映すはずの盤面に、読めない“しきい値”が混じりはじめたようです…
ウラシリ怪談

押印欄がひとつ多い

決裁が速くなったぶんだけ、押されるはずのない欄が一つ、毎晩増えていたそうです…
ウラシリ怪談

午前十時の受注番号

止まっていたはずの注文が、午前十時ちょうどにだけ息を吹き返したそうです…
ウラシリ怪談

下りたままの踏切

下りた踏切が鳴らしていたのは警報ではなく、町の中へ入る順番だったのかもしれません…
ウラシリ怪談

四時四分の深さ

午前四時四分の小さな揺れが…揺れなかったはずの通路だけを伸ばしていったようです…
ウラシリ怪談

休館日の返却

臨時休館の静けさの中、翌朝のログにだけ“誰かの作業”が増えていたそうです…
写真怪談

ISO 0 ― 光が抜け落ちるカメラ

ISO 0の設定で切られたシャッターは、光ではなく「記憶」を露光する。
晩酌怪談

ボトルの底から聞こえる声

深夜の店内で、瓶たちは静かに並んでいた。 けれど、その夜だけは、光の色が違っていた。
ウラシリ怪談

描かれた横顔

廃棄されたポスターの中に、印刷するたび形を変える横顔があるという…