写真怪談

写真怪談

結び目のないブリキ缶

住宅地の中の農家、その納屋口で“いつもはすぐ消える猫”が動かなかった日――黄コンテナの上のブリキ缶は、ほどけない形で縛られていました。
写真怪談

一輪車の戻り跡

住宅地の裏の貸し畑で、白い防虫ネットの弧が“数えたぶんだけ”増えていく。
写真怪談

押ボタン式の誤差

青空の交差点で「押す」たびに、渡るはずの線が一本ずつ減っていく──銀色フェンスの向こうで、何が吊られているのか。
写真怪談

七番打席のぬるい缶

開場前の無人の打席で、ぬるい缶だけが現実の温度を裏切る――七番打席に戻れない“最後の一分”の話。
写真怪談

狐壇の通路

五色の房が揺れる夜、白い狐たちが並び替わって“通路”をつくる――その先で、誰かの小さな願いがそっと帰ってくる。
写真怪談

外周フェンスの目数

誰もいない放課後の校庭を、フェンスの外から見ただけだった。それなのに、金網の目がこちらを数え始める——。
写真怪談

靴だけ

休憩に入った瞬間だけ、トラックの下に“靴だけ”が立つ──畑の匂いを連れて、境界のほうへ一歩ずつ近づいてくる。
写真怪談

網目の欠け

畑と道を分けるオレンジのネット。その“弛んだ一点”をスマホで確かめた瞬間、三人の影が四つになった。
写真怪談

角を曲がれない

午後三時の住宅街、交差点で配達のバイクが「角を曲がれない」――頭上の電線が震えた瞬間、街の影が一本ずつ抜かれていく。
晩酌怪談

二度目の正午

冬の正午、空っぽのテラス席にだけ“夕方の賑わい”が滲み出す——その路地は、同じ時間を二度目として差し出してくる。
写真怪談

影が先に青になる

昼の横断歩道で、影だけが信号より先に“青”になる──その一拍に足を預けた人から、白線の下へ消えていった。
写真怪談

空室の増える夕景

夕方の十五分だけ、あのマンションは“空室”ではなく“空き”を増やしていく――点くはずの灯りが点かない理由を、あなたは見上げて確かめられますか。
写真怪談

打設前の三時刻

雨もないのに濡れ続ける基礎、足場に増えていく黒い布――そして写真の「時刻」が三つに割れていた。打設前の現場で、何が“固められよう”としていたのか。
写真怪談

住んでいる家

人が住んでいるはずの古い家——けれど、窓の曇りの向こうで「生活」が増えていくのを見てしまったら、あなたは確かめずにいられますか。
写真怪談

水面に届くコード

夕暮れの池のベンチで、音のしないギター練習を見かけた――そう思った瞬間から、水面が「弾かれ」始めた。
写真怪談

三時四十四分の左側通行

改札を出て外へ降りる階段で、時計が「三時四十四分」から動かなくなった。逃げる理由もないまま、ただ“普通に降りよう”としてしまった――。
写真怪談

赤い前掛けの結び目

冬の午後四時、どんど焼きの煙が“帰り道”をつくった――赤い前掛けの結び目だけが、去年と違っていた。
写真怪談

硬貨専用

人通りのない農園の販売機なのに、商品だけが「いつの間にか」売り切れていく——硬貨専用の扉の向こうで、誰が何を買っているのか。