写真怪談

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車道はここまで

吹雪の道で頼りになるはずの「下向き矢印」が、その日だけ“別の境界”を作りはじめる。
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剪定後の空巣

撤去されたはずの烏の巣は、なくなったのではなく――「空」に移っただけだった。
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白鳥ボートの「空席」

整然と並ぶ貸しボートの中で、いつも“空席”になる一隻だけが、なぜか濡れている——その湖は、水面の裏側に座るべき客を用意していた。
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水面が覚えている空

池に映る空が、いつもより“正確”だった日──水面は境界ではなく、入口になった。
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鳴かないカラスの名簿

高架駅の入口へ続く陸橋、電線に止まる鳴かないカラスを見つけた夕方——先頭車の窓に貼りついた人影が、こちらを“数える”ように見返してきた。
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赤い目印の先に、落とし物は戻らない

川面に浮かぶ落ち葉の島——赤い目印の先で拾ってしまった“落とし物”は、あなたの名前まで流していく。
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欠番の区画

入口の隙間から覗いただけの冬のシェア畑で、“欠番の区画”がこちらを登録しにきた――。
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午後二時半、遠景に合う山

冬の午後2時半、郊外の道から見える富士山が“近づく”とき、遠景に合った視線だけが持っていかれる。
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迎春の席に座るもの

その模様は、「並んで座る人たち」という意味だと店主は言った──正月飾りを載せた年の暮れ、その言葉の意味を、僕は知ることになる。
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通過人数マイナス1

自動改札のログに表示された「通過人数:−1」。誤作動のはずだったその数字は、十年前からずっと、同じ時間・同じ改札で刻まれ続けていた──。
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渡りきれない横断歩道

いつものバスから眺める横断歩道には、なぜか毎日同じ二人の子どもが渡りかけたまま写り込む──スマホの中の一枚の写真だけが、その「渡りきれない時間」を少しずつこちら側へずらしてくる。
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昼のツリーに吊られているもの

冬の広場に立つクリスマスツリー──真昼の青空の下、その赤い雫形のオーナメントだけは、まだ起きていないはずの「落ちてくる誰か」の姿を映していました。
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壁で続いている作業

住宅街の電柱工事を眺めていると、民家の壁に貼りついた作業員の影だけが、いつまでも“落ちきれない”でいることに気づきました──。
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二つ口のサンタポスト

「左は来年へ、右は届かなかったものが戻る口です」――冗談半分の説明のはずが、亡くなったはずの友人から届いた一枚の年賀状が、その区別の意味をゆっくりと教えてくる。
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大開運の木肌

街路樹の名札に紛れて、ひとつだけ黄色い「大開運」のお守りが括りつけられた木がある——その木肌に刻まれていくものを、僕はなるべく見ないようにしている。
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雪の下で発電しているもの

畑の一部を潰して並べられたソーラーパネルは、真冬になると雪原に溶けて見えなくなる。吹雪の夜、その「見えない列」が、静かに息をし始めるまでは。
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地面の下を登校する子どもたち

地面に飲み込まれかけた一階の窓の前を、毎朝子どもたちが通り過ぎる──その窓の前で立ち止まった子を見てから、私は通学路をまっすぐ見られなくなった。
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川面にだけある町

夕焼けに染まる住宅街の川沿いでだけ見える、「もうひとつの町」がある──水面に現れる自分そっくりの影と目が合ったとき、こちら側に残れる保証はどこにもない。