窓の怪

ウラシリ怪談

灰色席の影

「純喫茶・灰色の窓」は、街角の古びた通りにぽつりと建っていたそうです。日中でも薄暗く、窓には薄いカーテンと埃じみたすりガラスがかかっていたといいます。その店では、常連客でもその日最初に入る者には「灰色席」だけが案内されるそうです。灰色席とは、店の最奥、ちょうど厨房の裏側に近い窓側の席で、カウンター越しにはマスターが背を向けて立っており、その背中しか見えない配置だったといいます。ある女性が偶然その席に座った時のことです。窓の外の通りには歩行者が流れていたのに、彼女の席から見ると、なぜか人々の顔だけが暗く塗りつぶされたように見えたそうです。影の輪郭だけが浮かび、声も音もまるで途絶えているかのように感じられたといいます……。その時、隣の空席に影が揺れたそうです。存在しないはずの椅子に、人影が腰を下ろしていたといいます。その影は立ち上がり、ゆるやかに口を開いたものの、声は聞こえなかったそうです。やがてマスターがコーヒーを運んできた時には、隣の影は消えていました。しかし、カップが急に滑り落ちそうになり、女性が手を伸ば...
写真怪談

窓の底

繁華街の裏手、ひっそりとした通り沿いに建つ三階建てのビル。その外観は無機質で、1階の全面ガラス窓からは事務所のような内部がうかがえた。夜は灯りも落とされ、冷たい反射だけが歩道をなめていたが──この窓が「おかしい」と気づいたのは、地元の大学に通う写真学生だった。彼はある課題のため、建物の夜景を撮り歩いていた。通りかかったそのビルの前でふと立ち止まり、三脚を立てる。だが、シャッターを切った直後、液晶に映し出された写真に奇妙な違和感を覚えた。──窓の奥に、水があった。事務所の中に湛えられた水ではない。“そのガラスそのもの”が、水面のようにたゆたっていた。反射の歪みではない。ガラスの内側には、泡が昇っていたのだ。異様だと思いつつも彼は、そのまま数枚を撮影した。翌日、大学でデータを確認した彼は、思わず息を飲んだ。撮ったはずのビルの1階部分に──巨大な「目」が写っていた。それは窓いっぱいを覆うほどに大きく、表面には鱗のような組織が浮かび、まばたきもしていない。ただ、じっとカメラのほうを見ていた。同級生に見せると、「CG...