ウラシリ怪談 灰色席の影
「純喫茶・灰色の窓」は、街角の古びた通りにぽつりと建っていたそうです。日中でも薄暗く、窓には薄いカーテンと埃じみたすりガラスがかかっていたといいます。その店では、常連客でもその日最初に入る者には「灰色席」だけが案内されるそうです。灰色席とは、店の最奥、ちょうど厨房の裏側に近い窓側の席で、カウンター越しにはマスターが背を向けて立っており、その背中しか見えない配置だったといいます。ある女性が偶然その席に座った時のことです。窓の外の通りには歩行者が流れていたのに、彼女の席から見ると、なぜか人々の顔だけが暗く塗りつぶされたように見えたそうです。影の輪郭だけが浮かび、声も音もまるで途絶えているかのように感じられたといいます……。その時、隣の空席に影が揺れたそうです。存在しないはずの椅子に、人影が腰を下ろしていたといいます。その影は立ち上がり、ゆるやかに口を開いたものの、声は聞こえなかったそうです。やがてマスターがコーヒーを運んできた時には、隣の影は消えていました。しかし、カップが急に滑り落ちそうになり、女性が手を伸ば...