鉄骨の声
「なんであんな場所で遊んだのか、未だにわからないんだ」そう語るのは、都内で働く30代の男性・翔太だ。彼は10年前、学生時代の仲間とともに、とある廃墟を探索したという。それは、都市開発が途中で止まった再開発地区の端にぽつんと残っていた、白壁のボロ家だった。塗装は剥がれ、窓には板が打ち付けられていたが、唯一2階に繋がる鉄骨の外階段だけは残っていた。手すりは錆びており、所々にツタが絡まっていた。問題の“異変”は、その階段で起きた。「友人の村上が、調子に乗って2階に登ったんだ。そしたら、急に――階段の金属が鳴いたんだよ」鉄が軋んだ、というレベルではない。「やめて…」と、女の声が、階段から“発せられた”のだ。村上は凍りつき、動けなくなった。だが、誰も助けに行けなかった。次の瞬間、階段がぐにゃりと歪んだ。誰も触っていないのに、勝手に折れ曲がったのだ。村上の足は挟まり、彼は悲鳴を上げた。階段に喰われたように。「その時気づいたんだ。階段の一番上の手すりが、…歯みたいな形してたって」逃げようとしたが、金属の壁が音もなく落ちて...
2025.08.04
写真怪談存在のゆらぎ記録と痕跡