増殖するもの

写真怪談

近道々

年末の露店通り、「駅近道→」の下を進むたび、案内の文字だけが増えていく。
晩酌怪談

赤丸の値札が消えない夕方

十二月の午後四時、居酒屋の軒先で“数え直せない”ものが増えていく——赤丸のメニューが滲むとき、棚の並びも変わりはじめる。
写真怪談

片付けてはいけない置き場

散らかり放題の資材置き場を片付け始めた新人は、何度片付けても元通りになる「裏の山」と、そこに眠るはずのない“形”と向き合うことになる──。
写真怪談

分解図にない部品

分解図に載っていない部品が、遺影を修整するたび一つずつ増えていく──エアブラシを洗うトレイの上で、消したはずの「誰か」が、ゆっくりと呼吸を始めた。
ウラシリ怪談

金型の日に増えるもの

ごく普通の樹脂製品を作り続ける工場で、「金型の日」だけ決まって増えていく顔の噂があるそうです…
写真怪談

緑の網の下で眠るもの

住宅街の片隅、いつもゴミがひとつも置かれない緑の網と、四本のペットボトルだけが並ぶ集積所があった──その数が「五本」になった日から、私は遠回りをするようになった。
晩酌怪談

瓶の数え方

毎朝、瓶を数え、同じ三人の足音で時刻を知る——ある朝、一本だけ増えた。数が合った翌日、路地は静かなままだ。
ウラシリ怪談

休館日の返却

臨時休館の静けさの中、翌朝のログにだけ“誰かの作業”が増えていたそうです…
ウラシリ怪談

鍵束の異物

交番の保管棚には、拾得された数十本の鍵が金具で束ねられていたそうです。家の鍵、車の鍵、自転車の鍵……番号札が一つずつ付けられ、誰が見ても整然としていたといいます。しかしある夜勤の署員が数を確認すると、昨日より一本多くなっていたそうです。新たな届け出はなく、署員の誰も追加していないのに、束の中に見慣れない鍵が紛れていたといいます。不審に思い、その鍵を取り出すと、刻印も番号もなく、先端には黒ずんだ焦げ跡のような痕が残っていたそうです。さらに溝には細い毛や、爪の欠片のようなものが詰まっていたといいます……。日を追うごとに、同じように“届けられていないはずの鍵”が束に増えていったそうです。それらはいずれも、使用の痕跡が不自然に生々しく、まるで何かを無理やりこじ開けた直後のようだったといいます。最後に見つかった一本は、署員が腰に提げていた自宅の鍵とまったく同じ形をしていたそうです。ただしその鍵だけは、まだ誰も使っていないはずなのに、握った感触が冷たく湿っていたといいます……。この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに...
ウラシリ怪談

署名のない落とし物

警察署の落とし物保管室には、数え切れないほどの傘や財布、眼鏡が並んでいたそうです。その棚の奥には、記録にないはずの鞄がひとつ、いつの間にか置かれていたといいます。鞄の中には、使用期限のない定期券や、宛名の消えた封筒が入っていたそうです。誰のものとも分からないのに、署員が近づくたび、定期券の顔写真だけがわずかに違って見えたといいます……。やがて、棚の中の“持ち主不明”の落とし物が、少しずつ数を減らしていたそうです。誰かが引き取りに来た記録はなく、監視カメラにも映像は残っていなかったといいます。しかしその翌朝、引き取りのサインだけが一枚分ずつ増えていたそうです。署員の誰も、筆跡に覚えがなかったといいます……。その保管室には今も、時折新しい落とし物が増えているそうです。届けられていないはずの品々が……。この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。落とし物最多33万件 茨城県内 経済活動回復 影響か 県警まとめ
写真怪談

器の底に沈む影

昼下がり、赤いカウンターに置かれたラーメン。湯気の立ち上るその姿に、私は妙な既視感を覚えた。スープをすくうと、表面に浮かぶ油膜が人影のように揺れる。偶然だと思いながら麺を持ち上げた瞬間、空気がざわりと震えた。麺は口に運んでも減らなかった。何度すすっても、同じ量が器の中に戻っている。食べ進めるほどに、むしろ具材が増えていく。チャーシューは重なり合い、メンマは束になり、やがて器の縁から溢れそうになる。「これはおかしい」とレンゲを沈めたとき、器の底に何かが映った。それは私自身の顔――しかし、ほんの少し遅れて動いていた。まるで水鏡に映る影が、別の時間を生きているかのように。慌てて顔を上げると、店内は無人だった。けれど器の中には、確かに“私ではない誰か”が沈んでいた。その瞬間、麺が器から跳ね上がり、口を塞ごうと絡みついてきた。私は慌てて箸を置いたが……器の中の影は、まだじっと私を見上げている。この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。