境界

写真怪談

浴衣の五人

駅前の夏祭りの帰り道。人ごみから少し外れた歩道で、五人の女性が並んで立っていた。全員が浴衣姿で、後ろを向いている。髪をまとめ、帯を締め、誰一人としてこちらを振り返らない。最初は気にせず通り過ぎようとした。でも、近づくにつれ、何かがおかしいと気づいた。まず、五人とも、まったく同じ靴を履いていた。次に、帯の結び方までが全員一緒。浴衣の柄だけが違う。それでも祭りの格好としては珍しくない。だが──立ち止まったとき、自分の足元が急に濡れた。雨なんて降ってない。しゃがんでみると、彼女たちの下、歩道の隙間から濁った水がしみ出していた。しかもそれが、真ん中の女の足元だけから流れていた。その時、五人のうち一人が、ゆっくりと手を上げて、髪を直す仕草をした。……髪を直す指が、七本あった。一瞬で背筋が凍った。動けなかった。でも次の瞬間、隣の友人に肩を叩かれ、振り向いたら──五人はもういなかった。そこには乾いた歩道と、柵の向こうに灯りだけが残っていた。この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。
ウラシリ怪談

踊り場の教室

深夜、集合住宅の階段を降りた住人が、いつもとは異なる踊り場に出たと報告されています。そこには扉があり、覗けば内部が教室のように机と黒板が並んでいたというのです。本来あるはずの自室の位置と違う空間へ、一歩踏み込んだだけで入口が存在していたという異常。別の日には、同じ階段を下りると、突然窓の外に見慣れぬ廊下が延び、周囲の風景も湿った曇天に変わっていたと証言が残りました。誰もが覚醒時には夢とは断言できず、部屋と世界との境界が摩耗していく感覚に囚われたようです。ある住人はついに、その廊下を辿って扉の中へ進んだ後、戻ってこなかったと記録されました。以後、階段は正常に見えつつも、訪れる者に未確認の空間への入り口を映し続けているようです。この怪談は、以下のネット記事をきっかけに生成されたフィクションです。Exploring the Glitch in the Matrix Phenomenon - Lemon8