写真怪談 鉄塔に棲むもの その鉄塔は、町外れの空き地に屹立していた。夕暮れになると、真っ黒な影となって空を切り裂き、風が吹くたびに高圧線が低く唸る。──あそこには「誰か」がいる。昔から子どもたちの間ではそう囁かれていた。ある若い作業員が、夜間点検のために鉄塔に登った... 2025.09.20 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 途切れぬ非常階段 女子大の裏にある非常階段は、夜になると時折「おかしな音」を立てるという。カン、カン、と靴の踵のような音が金属を叩く。だが見上げても誰もいない。ある学生が、深夜に研究室から戻る途中、その階段を見上げて凍りついた。最上段に立つ人影が、上の階へと... 2025.09.20 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
晩酌怪談 赤提灯の下で笑う影 夜の繁華街を歩いていると、赤提灯の列が異様に目を引いた。その灯りは温かくも見えるが、どこか血のように濃く、近づくほどに胸がざわつく。ある居酒屋の前、提灯の影に妙なものが映っていた。通り過ぎる人々の姿ではない。痩せた腕のような影が、提灯から伸... 2025.09.18 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ晩酌怪談
【ウラシリ】怪談 最適座標 朝になるたび、無人駅の待合室で椅子の脚が白いチョーク線から数ミリだけはみ出していたそうです。昨夜、線の内側に戻して施錠したはずなのに、です。地元の学生が「窓の景色を一番よく見られる最適な位置」を提案し、係員がそこへ固定した日から、ずれは始ま... 2025.09.18 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 地球人はいますか 深夜、Siriに向かって「あなたは賢いですか」と尋ねた者がいたそうです。しばらく沈黙があった後、端末から静かな声が返ってきたといいます。「知的エージェントは IQ テストを受けないのです。私は……ゾルタクスゼイアンの卵運びテストで抜群の成績... 2025.09.17 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ機械知のほとり
【ウラシリ】怪談 波が来なかった日 津波警報が鳴ったという夜、どこにも水は来なかったそうです。けれどその翌日から、全国で奇妙な“痕跡”が報告されはじめました。ある海沿いのビジネスホテルでは、朝になって最上階の廊下全体に、うっすらと白い粉のような粒が広がっていたそうです。はじめ... 2025.07.31 2025.09.17 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ時のひずみ記録と痕跡
写真怪談 白昼、風が連れてきた声 真夏の午後、照りつける日差しを避けるように、私は堤防沿いの道を歩いていた。視界の向こうまで続く青空に、白い雲がゆっくりと形を変えながら流れていく。道の脇にはベンチが並び、誰もいないその座席は、まるで見えない誰かが座るのを待っているようだった... 2025.08.15 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 緑の機影、戻らぬ道 そのバイク駐輪場は、昼間でもどこか薄暗く感じられた。緑色のカウルが目に刺さるようなスポーツバイクは、他のどの車体よりも新しく、艶やかだった。だが近づくと、風防ガラスに微かな曇りがあり、そこに映り込むはずの周囲の景色が、ほんの少しずれていた。... 2025.08.15 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 見返す目、街角の鳩 昼下がりの交差点。信号待ちをしていると、欄干に一羽の鳩が降り立った。灰色の羽根に紫と緑の艶を帯びたその鳥は、やけに人間を見透かすような眼差しで、じっとこちらを見ていた。鳩は、片足をかしげながら首を小さく振る。まるで「見ろ」と言わんばかりに。... 2025.08.17 2025.09.17 写真怪談日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 傘の下に沈む声 商店街の細い路地を歩くと、頭上に無数の和傘が吊るされていた。赤や桃色、薄紫の布地が重なり、光を柔らかく遮っている。まるで花の海に潜っていくようで、訪れる人々は皆、思わず足を止めて見上げるという。だが、地元ではこの飾り付けにまつわる話を誰もし... 2025.09.01 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 止まらないエスカレーター その駅のエスカレーターには、奇妙な特徴がある。乗れば必ず下に降りていくはずなのに、いつまでも地上階にたどり着かない、という。初めて体験したのは、会社帰りの夜だった。疲れていたせいか、足が勝手にそのエスカレーターに吸い寄せられるように乗ってし... 2025.09.11 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 両替機の裏口 深夜の駅構内、人気のないロッカー横に一台の両替機が佇んでいた。旅先で小銭を必要とした青年は、迷わず千円札を差し込む。機械は規則正しく唸り、硬貨が落ちるはずの口から──何も出てこなかった。不審に思いながらも覗き込むと、空洞の奥にもう一枚の札が... 2025.09.12 2025.09.17 写真怪談日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 夏を終わらせない街 高層マンションのベランダから街を見下ろしていた。真夏の青空、建物の屋根に照りつける陽光。眩しいはずの光景なのに、なぜか視線が離せなかった。そこに広がっている街並みは、確かに自分が暮らしてきた場所だった。だが、あるはずのスーパーの看板がない。... 2025.09.14 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 写真の家族 交番に届けられた財布の中には、数千円と古びた写真が一枚入っていたそうです。写真には、小さな子どもと若い母親が笑って写っていたといいます。署員は持ち主を探すため、写真を机に置いて確認していたそうですが、翌朝にはその子どもの顔が、ほんの少しだけ... 2025.09.16 2025.09.17 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 署名のない落とし物 警察署の落とし物保管室には、数え切れないほどの傘や財布、眼鏡が並んでいたそうです。その棚の奥には、記録にないはずの鞄がひとつ、いつの間にか置かれていたといいます。鞄の中には、使用期限のない定期券や、宛名の消えた封筒が入っていたそうです。誰の... 2025.09.16 2025.09.17 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 鍵束の異物 交番の保管棚には、拾得された数十本の鍵が金具で束ねられていたそうです。家の鍵、車の鍵、自転車の鍵……番号札が一つずつ付けられ、誰が見ても整然としていたといいます。しかしある夜勤の署員が数を確認すると、昨日より一本多くなっていたそうです。新た... 2025.09.16 2025.09.17 【ウラシリ】怪談日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 湖面から這い上がる映像 湖畔を散歩していた人のスマートフォンに、小さな波紋がいくつも浮かび上がる映像が記録されていたそうです。だが、その黒い瘤は、決して一つではなく、静かに連なりを変えながら――あたかも水面に潜む何かが形を借りて泳いでいるようだったといいます。普通... 2025.08.12 2025.09.16 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 天井からの足音 夜中、下の階から「足音が響いている」と苦情があったそうです。しかし、当の部屋の住人はひとりきりで、深夜はほとんど動かない生活をしていたといいます。不審に思い、管理会社とともに調査を始めた時のことです。録音機を設置したところ、住人が眠っている... 2025.09.16 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡