ウラシリ怪談

ウラシリ怪談

未来に開かれぬ上映

とある大型イベントで、新作ホラーゲームの映像が公開された夜のことだそうです。開発者の一人が自宅でテスト用の開発画面を開いた時、タイトルの下に見慣れぬ文字列が浮かんでいたといいます。最初は発表用の素材が紛れ込んだのかと思われました。実際、その日には他作品の最新映像や、異色のコラボの告知、さらにはアニメ化の発表までが立て続けにあったからです。けれど文字列はコードの中に存在せず、削除もできないまま、再起...
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歪むスクリーン

ある夜、とあるアクションゲームの不具合を確認するために、テスト映像の配信が行われたそうです。その画面には、単なる処理落ちやノイズでは説明できない異変が映っていました。映像の隅で色の粒がかすかに盛り上がり、呼吸をするように膨らんでは沈む。その揺らぎに合わせてキャラクターの動きも微かに乱れ、ただのパフォーマンス低下とは違う感触を放っていたといいます……。やがてその噂は広がり、「深夜に映像を再生すると、...
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まだ夏なのに

夏の陽射しに照らされた店先に、除雪機と新しいストーブが並んでいたそうです。冬を急ぐように、そこだけ季節がずれているかのように見えたといいます。夜になると、閉じたシャッターの奥から微かな響きがしたそうです……金属が息を漏らすような音でした。誰も近づかないはずのガラスには、灯りに揺れる影が映り、炎が燃えたがっているように見えたと語られています。翌朝にはただ静かな陳列だけが残り、夜のことを確かめた者はい...
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点滅する交差点の影

住宅街の街灯が夜通し点滅を繰り返していたそうです。信号も同じように瞬き、赤と青が途切れ途切れに照らしては消えました……。ふと、信号が赤に変わる瞬間、交差点の真ん中に立つ人影が見えたといいます。次に点いた時には、もう歩道に移っていたそうです。足音もなく、車も止まったまま、光の間だけ存在を移していたようです。最後に街灯が長く点いた時、その影は信号機の真下にいたそうです。しかし直後、全ての灯りが一斉に消...
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受領簿の筆跡

落とし物センターに傘を取りに来た人がいたそうです。しかし駅員は「すでに受け取り済み」と答えたといいます。受領簿を見せられると、確かにその人の名前が書かれていたそうです。ただ、その筆跡は本人のものではなく、誰かが拙く真似たような字だったといいます……それ以上は確かめられず、記録だけが残っているそうです。この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。2024年度の忘れ物件数が4...
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帳簿に載らぬ封筒

都内の落とし物保管所では、毎日のように財布や傘が積み上げられるそうです。その中に、帳簿に記録されない“封筒”が紛れ込むことがあるといいます。ある夜、当番の職員が机に置かれた封筒を開けると、中には千円札ばかりが詰まっていました。だがどれも片側が焼け焦げていて、指で触れると灰のように崩れたそうです。慌てて封を閉じ、引き出しにしまったものの、翌朝には封筒ごと跡形もなく消え、代わりに机の上に黒い手形が点々...
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さびしい?──機械の奥の問い

配膳ロボットの“問いかけ”は、記憶の奥に触れる異変を呼び起こすことがあるようです……
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迎えを待つ椅子

認知症カフェの一角に置かれた“模擬バス停”は、いつも同じ角度で椅子が揃っていたそうです。訪れる人が座っても、立ち去った瞬間には必ず元の向きに戻っていたといいます。ある日、閉店後の防犯カメラに、誰もいないはずのバス停で椅子がゆっくりと回転し、停留所の方角を向く様子が映っていたそうです。映像には、人影のようなものが腰掛ける輪郭も映り、帽子を深くかぶっていたといいます。それから、その椅子に座った利用者は...
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濡れた蓋

雑誌棚の最下段、色褪せた地方観光特集の一頁に、村の下水マンホールの写真が載っていたそうです。灰色の鉄蓋いっぱいに小さな生き物の絵が塗られ、観光客向けに全国へ広がっているといいます。ただ、その村のものは妙でした。人通りのない路地の中央に埋め込まれ、瞳は黒く沈み、光を吸っているように見えたそうです。訪れた撮影者によれば、真夏の快晴にもかかわらず、その蓋の上だけが濡れていたといいます。そこから細い水筋が...
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録画しています

鍵を回した音で、廊下の奥の何かが一瞬だけ、ぬるりと動いたように見えたそうです。照明をつけると、リビングの観葉植物が、まるで移動したかのような位置にあったといいます。鉢の底には、薄く擦れたような跡が床に残っていたそうです。それだけであれば気のせいで済んだかもしれません……ですが、冷房のリモコンが勝手に点灯した瞬間、テレビが“無音のまま”起動したそうです。映像は真っ黒で、番組も入力もない状態だったにも...
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錆びた道の呼び声

春の夕暮れ、下校途中の少女が姿を消したそうです。家まであと数百メートル、道沿いには小さな畑と古いガードレールが並んでいたといいます。その道を通った別の児童が、「誰もいないのに、呼びかける声がした」と話していました。声は風の向きと関係なく、一定の高さで響いていたそうです。近くの住人はそれを「鉄が電波を拾っただけ」と笑ったそうですが、少女が消えた時刻、その声ははっきりと名前を呼んでいたといいます。捜索...
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湖面から這い上がる映像

湖畔を散歩していた人のスマートフォンに、小さな波紋がいくつも浮かび上がる映像が記録されていたそうです。だが、その黒い瘤は、決して一つではなく、静かに連なりを変えながら――あたかも水面に潜む何かが形を借りて泳いでいるようだったといいます。普通なら、水面に影が揺れるくらいでしかないはずの光景が、どこか非現実へと引きずられるような違和感を残していたそうです……その記録の先に、何があったのかは、誰にも確か...
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見返す群れ

ある水槽の前に立った客は、皆、奇妙な共通点を持っていたそうです。ガラス越しの水中で、群れを成す魚たちがぴたりと動きを止め、その人物をじっと見返すのです。魚は人の顔を覚えるといいます。しかし、その日は、初めて来た客にも同じ反応を見せたそうです。まるで、誰を見ても“知っている顔”として迎えているかのようでした。職員が記録用に撮影した映像では、魚の群れが形を変え、人間の顔を正確に描き出していました。しか...
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洞窟に置き去りの袋

洞窟に置き去りにされた色あせた菓子袋から、岩壁と水滴を侵す糸のようなものが伸びていたそうです…
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2:33怪異事件記録

午前二時三十三分──その時刻にだけ現れる“声”と、それに触れた者が残す不可解な痕跡。やがて音は物に宿り、そして映像に滲み出す……これは、三つの記録から成る、ひとつの怪異の連なりです…壱その家に電話が鳴るのは、決まって午前二時三十三分だったそうです。最初は一回だけ、受話器を取っても雑音しか聞こえなかった。だが二度目には、遠くで金属を引きずる音と共に、抑揚のない声が響いたといいます。「この電話は一生動...
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夜明けに濡れる女神像

古い商店街の入口に立つ女神像は、誰も水をかけていないのに、決まって夜明け前だけ濡れていたそうです。濡れているのは胸元から下、まるで誰かに抱き締められた跡のように輪郭を残して……。ある巡回員が深夜に通りかかったとき、水音と一緒に低い笑い声を聞いたといいます。慌てて照らすと、像は乾いていて、足元には濡れた布が丸く置かれていました。それは何かを包んだ跡のある布で、翌朝には跡形もなく消えていたそうです。そ...
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波打ち際の鐘

島の古い鐘楼は、八十年前の爆風で砕け、そのまま放置されていたそうです。だが先月末、夜の海辺にいた漁師が、その鐘の音を聞いたといいます。音は次第に近づき、波打ち際でぴたりと止まったそうです。翌朝、浜には見慣れぬ石片が散らばっており、その一つには、鐘楼に刻まれていたはずの祈りの言葉が刻まれていたそうです。しかし、その文字は刻まれた部分だけが新しく、濡れていなかったといいます……そんな話を聞きました。こ...
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38番目の銘柄

その“投資ファンド”は、起点となる指示をAIに与えただけの簡素な仕組みだったそうです。38の銘柄を、条件に沿ってAIが自動選定し、均等配分で保有。まるで優等生の仮想運用……だが、そこで起きた収益の跳ね方には、金融の理では説明のつかない“異常な挙動”が潜んでいたといいます。誰かがモニターを見る時には、常に数字は穏やかだったそうです。しかし、一人きりで確認した者の中に、“数字がこちらを見返してきた”と...