説明のつかない痕跡

ウラシリ怪談

第十六報の折り鶴

復旧の報告書は、安心のための紙だったはずなのに…折られて届くようになったそうです…
ウラシリ怪談

検出された五秒から二十秒

見えない透かしを探すはずの検証がいつからか本物の会話の欠落を示すようになったのかもしれません…
ウラシリ怪談

空気の脂

空気から生まれたはずの脂が、台所の火で“言葉”を滲ませはじめたそうです…
ウラシリ怪談

灯りのないツリー

熱源のないツリーが燃えた夜…翌朝の庭には十一個だけ飾りが戻っていたそうです…
ウラシリ怪談

燃えた連絡バスの警告音

燃え尽きたはずの空港連絡バスから…警告音だけが帰ってくるそうです…
ウラシリ怪談

離陸前の告知

空の記念日に合わせて作られた言葉が、地上で先に搭乗手続きを始めていたようです…
写真怪談

剪定後の空巣

撤去されたはずの烏の巣は、なくなったのではなく――「空」に移っただけだった。
ウラシリ怪談

四時四分の深さ

午前四時四分の小さな揺れが…揺れなかったはずの通路だけを伸ばしていったようです…
ウラシリ怪談

自動運転が止まるはずのない地点

十二月から自動運転が本格導入される路線で、まだダイヤに載っていないはずの「無名駅」が、車上データベースの奥でゆっくりと営業を始めているそうです…
写真怪談

分解図にない部品

分解図に載っていない部品が、遺影を修整するたび一つずつ増えていく──エアブラシを洗うトレイの上で、消したはずの「誰か」が、ゆっくりと呼吸を始めた。
ウラシリ怪談

自粛通知の来ない便

日本への旅行自粛の通知が世界を静かに冷やしていた頃、ある地方空港では「どうしても自粛にならない便」がひとつだけ残り続けていたそうです…。
写真怪談

緑の網の下で眠るもの

住宅街の片隅、いつもゴミがひとつも置かれない緑の網と、四本のペットボトルだけが並ぶ集積所があった──その数が「五本」になった日から、私は遠回りをするようになった。
ウラシリ怪談

二十四個目のボタン

11月22日を「ボタンの日」として祝う、ある会社のウェブ記事には、社員が決して口にしない“数え方”が隠れているそうです…
ウラシリ怪談

届かなかったはずの報告書

停電で止まっていたはずのファクスから、停電中にしか起こりえない出来事の報告が届き続けているそうです…
ウラシリ怪談

四角の癖

取り消された一枚の本体は消え、四角い癖だけが会場に残る…その内側に立つと、現実のほうが枠へ寄っていくのです…
晩酌怪談

もう一杯の席

泡が落ち着くたび、向かいの席が重くなる。減ったはずのきゅうりと、乾かない二重の輪——今夜も、誰かが「もう一杯」だけ飲みに来る。
ウラシリ怪談

二八秒の稼働報告

二八秒を境に音声だけが先へ進み、会見室には「やりました」の残響だけが等間隔で残るという話を聞きました…
ウラシリ怪談

柵の向こうで続く通報

夜明けの植え込みから、一度きりの報告だけが毎朝こぼれ続ける通りの話を聞きました…