窓の怪

写真怪談

対岸の点呼

対岸の窓が人数を数え始めたとき、足元の水が階段になった。最後のひとつにされる前に、私は段を崩した——。
晩酌怪談

瓶の数え方

毎朝、瓶を数え、同じ三人の足音で時刻を知る——ある朝、一本だけ増えた。数が合った翌日、路地は静かなままだ。
写真怪談

角度だけが追ってくる

無風なのに、アンテナの“角度”だけが私を追ってくる。意味のない受信の先に写っていたものは——。
写真怪談

高層の窓に降りてくるもの

高架下から見上げると、白い高層マンションの窓が並んでいた。二十階あたりの窓に、何かが張りついているのが見えた。人影のように見えるが、その高さからは細部など判別できるはずがない。だが確かに、そいつの目は――真下に立つ自分と焦点を合わせていた。慌てて視線を外し、次に見上げたとき、影はもう二十階にはいなかった。代わりに、一階のガラス扉の内側で、まったく同じ姿勢をしてこちらを見ていた。移動した、のではない...
ウラシリ怪談

灰色席の影

「純喫茶・灰色の窓」は、街角の古びた通りにぽつりと建っていたそうです。日中でも薄暗く、窓には薄いカーテンと埃じみたすりガラスがかかっていたといいます。その店では、常連客でもその日最初に入る者には「灰色席」だけが案内されるそうです。灰色席とは、店の最奥、ちょうど厨房の裏側に近い窓側の席で、カウンター越しにはマスターが背を向けて立っており、その背中しか見えない配置だったといいます。ある女性が偶然その席...
写真怪談

窓の底

繁華街の裏手、ひっそりとした通り沿いに建つ三階建てのビル。その外観は無機質で、1階の全面ガラス窓からは事務所のような内部がうかがえた。夜は灯りも落とされ、冷たい反射だけが歩道をなめていたが──この窓が「おかしい」と気づいたのは、地元の大学に通う写真学生だった。彼はある課題のため、建物の夜景を撮り歩いていた。通りかかったそのビルの前でふと立ち止まり、三脚を立てる。だが、シャッターを切った直後、液晶に...