ウラシリ怪談 乾かぬ跡
酷暑の日、ある家庭は室温を下げるため、濡れたシーツを開けた窓に掛けた。そよ風が通れば室内が幾分か和らぐ、そんなささやかな救いだった。だが、夜になると、リビングの湿った布から「そよ風」とは異なる音が漏れ始めた。風鈴か氷が溶けるような、金属を引きずるような、曖昧で耳に残る音だった。翌朝、シーツは乾ききっていたが、縁から黒い条がゆらりと床に延びていた。まるで“何かが窓から這い出した”跡のようである。夜が...
ウラシリ怪談
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