消える記録

【ウラシリ】怪談

休館日の返却

とある市の図書館が、システムメンテナンスのために一日だけ臨時休館したそうです。当日は、所蔵検索や予約、返却期限の延長といったオンライン機能はすべて停止、電子図書館のログインも不可と告知され、返却はブックポストか提携のコンビニ返却のみとされて...
写真怪談

ISO 0 ― 光が抜け落ちるカメラ

中古カメラの箱を開けた瞬間、ひどく冷たい空気が手にまとわりついた。金属の外装にわずかな擦り傷。クラシックデザインのデジタル機だった。触れた瞬間、まるで人の手の温度を覚えているような感触があった。だが、シャッターカウントは「00000000」...
晩酌怪談

ボトルの底から聞こえる声

夜更けのバーは、いつも静かだった。客が一人、また一人と帰っていき、最後に残るのは俺と棚に並ぶ無数のボトルたちだけになる。氷の音が溶けて消える頃、決まって聞こえるのだ。――カラン。まるで誰かがグラスを置いたような小さな音。その夜も同じように棚...
【ウラシリ】怪談

描かれた横顔

あるデザイン会社の倉庫には、廃棄を待つポスターが積まれているそうです。中には、既に使用中止となった「ある文化イベント」のビジュアルも混じっているといいます。そのポスターには、若い女性の横顔が描かれていました。淡い光を浴びて、わずかに目を伏せ...
【ウラシリ】怪談

署名のない落とし物

警察署の落とし物保管室には、数え切れないほどの傘や財布、眼鏡が並んでいたそうです。その棚の奥には、記録にないはずの鞄がひとつ、いつの間にか置かれていたといいます。鞄の中には、使用期限のない定期券や、宛名の消えた封筒が入っていたそうです。誰の...