東京駅怪談

写真怪談

連鎖する物音

駅の地下通路に、灰色のカプセルが並んでいた。コワーキングスペースとして普及してから数年、もはや日常の一部でしかない光景だ。彼もまた、そこを通り過ぎようとした。だが、二番目のカプセルの前で足が止まった。――コツ、コツ、コツ……。中から微かな音...
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呼び続ける緑の受話器

駅の地下通路に置かれた二台の公衆電話。鮮やかな緑色のその筐体は、今やほとんど誰も振り向かない。しかし、深夜零時を過ぎると、必ず片方の受話器が持ち上がっている。誰も触れていないのに、受話口からかすかな呼吸音が漏れ、耳を近づけると低い声が呟くと...
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片道切符の白昼夢

八月の終わり、蒸し暑い駅構内で私は切符を買おうとしていた。緑色の機械の前に立つと、背後のざわめきが一瞬、すっと消えた。耳鳴りのような静寂の中、液晶画面に映ったのは、目的地の一覧ではなく、見覚えのない「夏の日」という行き先だった。冗談かと思い...
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止まらないエスカレーター

その駅のエスカレーターには、奇妙な特徴がある。乗れば必ず下に降りていくはずなのに、いつまでも地上階にたどり着かない、という。初めて体験したのは、会社帰りの夜だった。疲れていたせいか、足が勝手にそのエスカレーターに吸い寄せられるように乗ってし...
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両替機の裏口

深夜の駅構内、人気のないロッカー横に一台の両替機が佇んでいた。旅先で小銭を必要とした青年は、迷わず千円札を差し込む。機械は規則正しく唸り、硬貨が落ちるはずの口から──何も出てこなかった。不審に思いながらも覗き込むと、空洞の奥にもう一枚の札が...