赤い月を結ぶ指

写真怪談

その夜、ふと見上げた月は血のように赤く、電線に縫い止められているように見えた。
不思議と視線を逸らせず、じっと見続けているうちに気づいた。

電線が震えている。
風のせいだと思ったが、夜気は凪いでいた。
よく見ると、一本の線の結び目に、白く細い指が絡まっている。
指はぎこちなく動き、月を線に引き寄せるように引っ張っていた。

それは人間の腕の長さでは届かない高さだった。
だが確かに、そこに指がある。
やがて月が少しずつ歪み、赤い光が電線の網に滲み落ちてきた。
垂れた光は道路にまで届き、アスファルトに黒い染みを広げていく。

翌朝、その場所に行ってみると、電柱の根元の地面が濡れていた。
夜露にしては赤黒く、乾いた跡は指のような痕を描いていた。

この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。

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