路地裏の声

写真怪談

夜の仕込みを終えた帰り道、店の裏口から路地に出ると、青いゴミ桶が三つ並んでいた。
昼間は何の変哲もないはずのそれが、今夜は妙に膨らんでいる。袋越しに透ける中身は、新聞紙や生ごみの他に、布切れのようなものが見えた。
足を止めた瞬間、奥のゴミ桶が、かすかに動いた。
――ゴトリ。
金属の軋む音と共に、蓋の隙間から何かがこちらを覗いた。
白目がほとんどなく、瞳孔ばかりの濡れた黒い眼球。
次の瞬間、蓋が跳ね上がり、中から黒く濡れた手が、まるでこちらを捕まえようとするかのように伸びてきた。
慌てて後ずさると、その手はゴミ袋を掴み、ずるずると何かを引きずり戻した。
袋の中の布切れだと思っていたものが、人の顔の皮だったと気づくまで、時間はかからなかった。
耳の奥で、かすれた声が囁く。
「……次は、お前」

この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。

 

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