二千五百一枚目の整理券

ウラシリ怪談

郊外の動物園の最寄り駅で、親子向けの催しがあるそうです。二月上旬のある日曜日、朝九時から駅前広場で整理券を配り、十時から十五時まで、第二駐車場で展示や体験が行われる――そういう、よくある案内でした。整理券は一人につき一枚。二千五百枚で配布終了。代表者が受け取れるのは四枚まで。入場は一時間刻みで五回、各回五百人。数字がきれいに揃いすぎていて、安心できるはずでした。
 
ところが、配布開始から三十分ほど経った頃、係の人が小さく首をかしげたといいます。束の減り方と、控えのカウントが合わない。配った枚数より、手元の束が減っていない。足りないのではなく、減らない。誰かがこっそり補充しているように見えたそうです。
 
そのうち、整理券の端が妙に湿りはじめました。手汗とは違う、冷たい湿り気です。紙の匂いの下に、薄い焦げの匂いが混じる。まだ「煙の体験」など始まっていない時間帯でした。
 
発現は、番号でした。二千五百枚限定なのに、「2501」と印字された券を持つ人が現れたそうです。続いて「2502」「2503」。係の人は笑って冗談だと受け取り、紙質を確かめました。偽造にしては、妙に正しい。インクの乗り方も、ミシン目も、券の裏に押された注意書きの薄い灰色も、配布しているものと同じでした。
 
「それ、どこで受け取ったんですか」
そう尋ねると、皆、同じ方向を指したといいます。駅前広場の列のいちばん後ろ。ところが、その場所には、列の終端を示すはずのコーンしかなく、そこから先には誰も並んでいなかったそうです。空いた地面だけが、規則正しく一人ぶんずつ、靴の跡で埋まっていました。
 
十時の入場案内が始まりました。通常なら「一番から」と呼ぶはずが、その日は違ったといいます。放送は淡々と、「本日十時の回、五百一名のご案内です」と告げました。五百人のはずの枠に、見知らぬ一名が最初から含まれている。係が慌てて訂正しようとした瞬間、別の係が、手元の名簿の余白を見つめて固まりました。誰も書き足していないのに、余白に一行だけ、鉛筆のような薄い字で追加されていたそうです。
――「二千五百一番 同行者なし」
 
列は動き、第二駐車場へ流れていきました。ところが、柵の前で係が整理券を切るたびに、切り取った半券が、落ちてもいないのに足元に増えていく。紙片は同じ番号を繰り返し、同じ角度で折れ、同じ湿り気を帯びていました。数えても、数え直しても、切った枚数より半券が多い。
 
さらに妙なのは、券を出す人の手でした。二千五百番台の券を持つ人の親指の腹に、薄いインク移りがあったといいます。数字の「2501」。まるで、紙ではなく皮膚が整理券の控えになっているようでした。
 
午後、催しは予定どおり終わったそうです。けれど片付けの後に、駅前広場の植え込みから、未使用の整理券の束が見つかりました。封も切られていない新品の束で、先頭には「2501」と印字されていた。束の最後は、なぜか「2500」ではなく、同じ「2501」だったといいます。
 
後日、遺失物として保管された整理券の半券は、二千五百枚を大きく超えていたそうです。番号は二千五百台のまま増え続け、同じ番号が、違うミシン目の欠け方で何十枚も混ざっていた。処分のために数えた人が、最後にこう言い残したといいます。
「数えるほど、増えていくんです。二千五百一枚目が、いつまでも終わらない……」
それ以上の記録は残っていないそうです……そんなふうに伝わっているようです……。

この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。

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