夜の住宅街の角に、それは立てかけられていました。木製の、笑顔を貼り付けた子供の形。路地の暗がりに溶けるような塗装で、目だけが白く抜けています。
近くに住む人は言います。あの看板、昼間は必ず少し傾いているのに、日が暮れると真っ直ぐこちらを向くのだと。ある晩、帰宅した男性がふと目をやると、その足がわずかに浮き、影が二つになっていたそうです。
翌朝、看板の後ろには何もなく、影も消えていました。ただ、舗道に小さな靴跡が、交差点の向こうまで続いていたといいます……誰も、追った者はいないそうです。
この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。