燃えた連絡バスの警告音

ウラシリ怪談

高速道路で、空港へ向かう連絡バスが突然止まり、後方のエンジン付近から煙が上がったそうです。運転手は「警告音が鳴ったが、すぐに消えた」と説明し、その直後に爆発音のようなものがして、車体はみるみる炎に包まれたといいます。乗っていた四十人あまりは全員が降ろされ、けが人は出なかった……そこまでは、ただの事故として片づく話でした。

問題は、その後です。

現場検証が入る前に、運行会社の倉庫で「同型車の予防点検」が始まりました。整備記録の担当者が、点検用の端末を起動したところ、焼けたはずの車両の番号が一覧に残っていたそうです。すでに廃車扱いで、電源が落ちているはずなのに、状態欄だけが薄く点滅し、「警告」の文字が出たり消えたりしていたといいます。

接続を試みると、端末は一度だけ応答しました。
応答は数値でした。

「41」

乗客乗員の人数と一致していたため、担当者は偶然だと思ったそうです。ところが、次に出てきたログが妙でした。タイムスタンプが、火災発生後の時刻を刻んでいるのです。しかも一定間隔で、同じ項目が繰り返されていました。

【警告音 発生】
【警告音 消失】
【警告音 発生】
【警告音 消失】

……まるで、誰かが消したり鳴らしたりを続けているように。

担当者が倉庫の奥にある部品棚へ移動した瞬間、天井のスピーカーが短く鳴りました。点検の合図に使う、あの甲高い電子音です。しかし、音の最後が不自然に伸びて、言葉の形に崩れたそうです。

「……しらない」

誰かの声に似ていましたが、声ではなく、警告音の余韻が勝手に言葉へ寄っていくような響きだったといいます。

整備班が慌ててスピーカーの電源を切っても、音は止まりませんでした。倉庫内のどこかではなく、点検端末の小さな内蔵ブザーから、同じ“伸びた警告音”が漏れていたそうです。端末は机の上で震え、画面にはまた「41」が点滅していました。

その夜、運輸関係の立ち入りが入り、焼けた車両の記録装置も回収されたといいます。そこには、最後の映像が残っていたそうです。避難誘導の様子が映り、全員がガードレールの外へ移っていく。炎が勢いを増し、カメラが白く飛ぶ……その直前、フロントガラスの反射に、座席の列が映ったといいます。

降りたはずの座席に、影がびっしりと並んでいたそうです。
人数が数えられるほど、均等に。

「41」

次のフレームで、影は一斉に顔だけを上げました。顔の形がなく、白い楕円がこちらを向いているだけでした。それでも、見られている感じだけがはっきり残ったといいます。直後、映像は途切れました。そこで記録が終わるのではなく、音だけが続いていたそうです。

警告音が鳴って、すぐに消える。
鳴って、消える。
鳴って、消える。

その繰り返しの合間に、ときどき混ざるのだそうです。短い言葉が。

「……しらない」
「……まだ」
「……のる」

事故後、同型車の点検は徹底されたそうです。それでも、夜間に倉庫へ入った者の中には、端末を起動していないのに警告音を聞いたという人がいたといいます。音の回数を数えた者がいて、四十一回で止まった……そんな記録も残っているそうです。

ただ、その翌朝に倉庫の入退室ログを確認すると、四十一回目が鳴った時刻だけ、誰も入っていないことになっていたそうです。確認した担当者は、そのページを印刷しようとして、やめたといいます。プリンターの表示が、紙切れではなく、こう出たからだそうです。

「41」

……そんな話を聞きました。

この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。

道央道・空港連絡バス車両火災で運転手「エンジン警告音が鳴ったがすぐに消え、爆発音して発煙した」と説明 HTB北海道ニュース

北海道テレビ:HTB online

 

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