12月17日が「飛行機の日」だと、社内の小さな広報メモに書かれていたそうです。
公式に決められた記念日ではない、とも。
それでも、空に関わる言葉は拾いやすいので、企画に使うことになったといいます。
担当者は、広報の手順をそのまま真似ました。
由来を調べ、今年の傾向を見て、ターゲットとゴールを決める。
自社の取り組みと掛け合わせ、発信する内容を検討し、コンテンツを作り、媒体を選ぶ。
ただ、その通りに進めるほど、文章のほうが先に進み始めたそうです。
企画書のSTEPが、夜のうちに増えていました。
STEP1からSTEP5の下に、見覚えのない行がひとつ。
STEP0.17:03。
それだけが追記され、消せなかったといいます。
次に、子ども向けの企画案が候補に上がりました。
空が見える温浴施設で、紙飛行機ではなく「キャッチコピーづくり」をする。
優秀作は、館内のポスターやのぼりに採用する。
よくある、明るい企画のはずでした。
印刷所から届いた仮ポスターは、文字の縁が妙に欠けていたそうです。
削れたのではなく、もともと抜かれている。
細かな穴が一直線に並び、まるで搭乗券のミシン目のように見えたといいます。
そのポスターを貼った日から、施設の窓の外を飛ぶものが変わりました。
航路に沿って飛ぶはずの音が、来ない。
見えるのは機体の形ではなく、空に開いた「機体の形の穴」だけ。
雲がその輪郭を避け、青だけが、機体の形に抜け落ちていたそうです。
入浴客が空を指しても、誰も騒ぎませんでした。
かわりに、全員の端末が同時に震えたといいます。
通知の内容は、同じ一文だけ。
「ご搭乗の準備をお願いします」
それが17時03分きっかりに届き、同時に、館内の時計が一分だけ戻ったそうです。
その日を境に、別の案が勝手に伸び始めました。
航空ファン向けの特別ツアー。
普段は入れない工場や舞台裏に案内する、という触れ込み。
さらに、乾いた土地に並ぶ「飛行機の墓場」を見学する工程。
どれも現実にありそうで、現実にあってほしくない単語だけが整いすぎていたといいます。
企画書の写真欄には、いつの間にか一枚の画像が差し込まれていました。
滑走路の端に、人影がある。
こちらを向いていないのに、目が合ってしまうような立ち方。
影の輪郭だけが、紙の上で滲んでいたそうです。
最後に残ったのは、アップサイクル商品の案でした。
廃棄された座席の布をつなぎ合わせ、パッチワークのクッションにする。
担当者は試作品を受け取り、会議室の椅子に置いたそうです。
触れると、布の冷たさが妙に長く残りました。
次の瞬間、縫い目がかすかに動き、座席番号のような区切りが浮かび上がったといいます。
「17A」
「17B」
「17C」
数字とアルファベットが、糸の影として現れ、すぐ消えました。
その消え方が、湯気の引き方に似ていたそうです。
翌朝、広報アカウントはロックされていました。
誰も触れていないのに、投稿が一件だけ流れていたといいます。
画像は、空港でもない場所の、濡れた地面。
その上に、機体の影ではなく、機体の形に抜けた「乾いた影」が落ちていたそうです。
投稿時刻は、17:03。
その後、担当者の作業フォルダには、空のままのファイルが増え続けました。
ファイル名は、日付と時刻だけ。
1903-12-17_17-03。
中身を開こうとすると、いつも画面が一瞬暗くなり、耳の奥で、遠いプロペラの回転が始まるようです。
そして、記録はそこで途切れているそうです。
誰がどこへ搭乗したのか、確かめた人はいないのかもしれません。
……そんな話を聞きました。
この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。
飛行機の日(12月17日)|意味や由来・広報PRに活用するポイントや事例を紹介
飛行機の日(12月17日)|意味や由来・広報PRに活用するポイントや事例を紹介 | PR TIMES MAGAZINE



1903-12-17_17-03…
1903年12月17日17時3分ですね。
気になった方はこの日付もぜひ調べてみて下さい。