一覧画面の右下

ウラシリ怪談

最近、防犯カメラの映像が、海外のサイトに大量に流出している――そんなニュースを取り上げる情報番組があったそうです。
番組スタッフは取材のため、専門家の案内で、その「流出カメラ」が並ぶ海外サイトの画面を、編集室の大きなモニターに映し出していました。

小さな四角い映像が、縦横にびっしりと並んでいたといいます。
玄関先、駐車場、事務所、保育室、誰かのリビング……どれも、本来なら見知らぬ他人が覗けるはずのない室内でした。

その中に、ひとつだけ、若いスタッフの目が止まった画面がありました。
薄い木目の床、古いこたつ、カレンダーの位置まで、地方に住む両親の居間とまったく同じだったそうです。

スタッフは、心配になって両親の家に見守り用カメラをつけ、つい先日、この流出騒ぎを知って慌てて設定を閉じたばかりでした。
アプリの公開範囲を「自分だけ」に変え、パスワードも長いものに変えたので、外部からは見られないはずだったといいます。

けれどサイトのサムネイルには、その居間の映像の端に「LIVE」と表示されていました。
右下には小さく、「視聴中:1」という数字もついていたそうです。

専門家が「確認してみましょう」とその画面をクリックすると、映像は大きくなりました。
こたつの前では、父親がうつぶせに眠っていて、その肩越しに、暗いテレビ画面と、壁の時計がゆっくり動いているのが見えたといいます。

ただひとつおかしかったのは、カメラの位置でした。
実際のカメラは棚の上に置いてあるはずなのに、映像は天井と壁の境目、部屋の一番高い角から覗き込むような角度になっていたそうです。

その角の影の中に、もうひとつ小さな丸い光がありました。
レンズ同士が見合っているような、誰かの目だけがそこにあるような、不自然な光り方だったといいます。

「視聴中:1」の数字が、「2」、「3」と増えていきました。
編集室でその映像を見ているのは、スタッフと専門家だけのはずなのに、なぜか一人分多く増えていったそうです。

そのとき、一覧画面の右下にあった別のサムネイルが、ぴくりと明滅しました。
タイトルには「Japan / Studio」とだけ表示され、そこに映っていたのは、まさに今、自分たちがいる編集室そのものだったといいます。

モニターの前に座る人数も、置かれた椅子の位置も、まったく同じでした。
ただひとつ違ったのは、映像の中のドアの横に、細長い影が一本、壁から少し浮いたように立っていたことだそうです。

振り向いても、実際の部屋には何もありませんでした。
なのに映像の中の影だけは、こちらを見下ろす位置から、動かないまま画面の外へとじわじわ滲み出していったといいます。

慌ててサイトを閉じ、モニターの電源まで落とした瞬間、真っ黒になった画面の中央に、さっきと同じ「視聴中:3」という文字だけが、残像のように浮かんでいたそうです。

その夜、スタッフが自分のスマートフォンから見守りカメラのアプリを開くと、「接続中の視聴者:3」という表示だけが消えずに残っていたといいます。
カメラの電源を抜いても、アプリを消しても、その数字だけはしばらく表示され続けていたそうです。

流出したおよそ千件あまりの映像の中には、ときどき「どこにも設置されていないはずの視点」から映っているものが混じると噂されています。
それは、こちらが覗くためのカメラではなく、「覗き返すためだけのカメラ」なのかもしれないと、編集室の人たちは今でも話しているそうです…。

この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。

〖危険〗防犯カメラ映像約1300件が海外に流出? 家庭内や保育園の映像も…専門家が警鐘「映像が悪用されてしまう可能性」

【危険】防犯カメラ映像約1300件が海外に流出? 家庭内や保育園の映像も…専門家が警鐘「映像が悪用されてしまう可能性」 | めざましmedia | “好き”でつながる
相次ぐ強盗事件などの影響もあり、需要が高まっている「防犯カメラ」。高齢者や子どもの見守りなどの目的で、家庭での利用も身近となっていますが、これらの映像が海外に流出している可能性があるといいます。読売新聞と共同で調査を行った、情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」によると、調査を行った海外7サイトで、約2万7000件の流出映像が見つかり、うち日本に関連すると思われる映像は、約1300件見つかった...

 

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