とある市の図書館が、システムメンテナンスのために一日だけ臨時休館したそうです。
当日は、所蔵検索や予約、返却期限の延長といったオンライン機能はすべて停止、電子図書館のログインも不可と告知され、返却はブックポストか提携のコンビニ返却のみとされていたそうです……静かな水曜日の話です。
翌朝、出勤した職員がブックポストを開けたところ、中は空だったといいます。
ただ、停止されていたはずの館内システムには「返却受付」の記録が夜通しで並んでおり、深夜の刻限だけでなく、館の時計には存在しない時刻――「24:00」「25:12」といった刻みでも、確かに処理された形跡が残っていたそうです。
そのいくつかには、ポスト返却不可とされている視聴覚資料の分類が含まれ、返却端末の欄には見覚えのない数字列と、地図に載らない店舗名が表示されていたといいます。
棚に戻す本がないのに、配架リストだけが増えていく日が続いたそうです。
ある日、「除籍済」と印字されたまま処分されたはずの児童書までが、返却履歴の画面に現れました。
書誌情報の「貸出者」の欄は空白で、代わりに「パスワード未登録」という文字が薄く灯り、ページを閉じても消えなかったといいます……その行だけ、液晶の明るさが少しだけ暗かったとも。
職員が念のために通知設定を切った後も、しばらくのあいだ、「返却が完了しました」という自動メールが何件か外へ送られていたそうです。
差出人は館のアドレス、本文には正しい返却番号、ただ宛先の多くが転居先不明で戻ってきました。
返信先に設定されていたのは、臨時休館日の案内ページで、すでに閉じられたはずの一日の説明に跳ぶだけだったといいます。
その後も、メンテナンスの告知を出すたび、過去の「返せないはずの物」が少しずつ返ってくるようになったそうです。
返却口は空のまま、台車の数は変わらず、記録だけが静かに棚を埋めていきました。
誰も見ていない時間にだけ動く配架の指示が、夜の閲覧室で小さく点滅していた……そんな話が残っています。
この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。
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