写真怪談

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余計な一人

オフィスの窓から見える非常階段には、いつも「一人余計な人」がいる──折り返しから降りきるところを、誰も見たことがないまま。
写真怪談

緑の網の下で眠るもの

住宅街の片隅、いつもゴミがひとつも置かれない緑の網と、四本のペットボトルだけが並ぶ集積所があった──その数が「五本」になった日から、私は遠回りをするようになった。
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通過するだけのタクシー

誰もいないはずの深夜の交差点を、毎晩決まって猛スピードで通過する黒いタクシー──ピンぼけ写真の窓に張りついた“その指”が、自分の手と同じ形をしていると気づいた瞬間から、逃げ場はなくなりました。
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水平で、下り坂

着陸前の数分だけ、この歩道は「水平のまま下り坂」になる。増える手すり、列に混ざる影、そして灯りが開く白い顔——空港の見学通路で起きる微細な歪みの行き先は、いつもあちら側だ。
写真怪談

対岸の点呼

対岸の窓が人数を数え始めたとき、足元の水が階段になった。最後のひとつにされる前に、私は段を崩した——。
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頭上に残された一段

空で終わる階段の“最後の一段”が、頭の上に降りてくる。足音は一度だけ——そして、何かを忘れる。
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三角の番人

積み上がる三角コーンは、数が揃ったときだけ「通行止め」以外の意味を持つ。夕暮れの詰所の窓で、反射帯が一本、息をしていた。
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穴番の夕暮れ

夕暮れの公園で、数えきれない「穴」がゆっくりと目になった――余ったひとつは、今もあなたを探している。
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逆さの歩幅

高架下の斜路で、私の足音はいつも一拍遅れて“頭上”を横切る。見上げた継ぎ目の向こうに、逆さの道路が通っていた。
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富士を結ぶ糸

雲が晴れた午後、電線が富士の白に触れた瞬間、町じゅうの「もしもし」が上空へ吸い上げられた——私の声も、たぶん今あの線の上にある。
晩酌怪談

もう一杯の席

泡が落ち着くたび、向かいの席が重くなる。減ったはずのきゅうりと、乾かない二重の輪——今夜も、誰かが「もう一杯」だけ飲みに来る。
晩酌怪談

二倍の氷が鳴る席

氷だけが先に出てくる、誰も座らない席。二拍ずつ鳴る音の正体を見た夜、ジョッキの内側にこちらを覗く“目”があった。
晩酌怪談

笑い顔の角度

「笑い顔が合う角度」を探して近づいてくる夜の席。ずれた“もう一人の笑い”が、あなたの乾杯の拍を待っている。
写真怪談

根の帳面(ねのちょうめん)

割れた塀の“中”は、夜になると数を数える——黄葉の枚数と人の数が揃った朝、町は静かにひとりぶん軽くなる。
写真怪談

風の名簿

墓地の棕櫚は、風が吹くたびに“名簿”をめくる。呼び出し音のない着信は、今晩、誰に届くのか——。
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帰り火の外灯

夕暮れ前から点る、庭の皿灯。傘に映った“顔”は、家の中ではなく、外のどこかへ帰ろうとしていた——。
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地脈の指音(しおん)

掘っても掘っても何も出ないのに、音だけが続いた。翌朝、音の中心が移った場所に立つと、足の裏が……。
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分別できないもの

この町では、赤は怒り、緑は後悔、青は声──感情も分別する決まりだという。間違えると、放送で名指しされる。ある朝、私は“冷めていない”ものを捨ててしまった。