土地と風習

土地に根づいた風習や人々の営みを題材にした怪談を集めています。

風景や祭礼の記録に紛れ込む、説明のつかない歪みが物語となり、古い土地の記憶と共鳴するのかもしれません……。

写真怪談

打設前の三時刻

雨もないのに濡れ続ける基礎、足場に増えていく黒い布――そして写真の「時刻」が三つに割れていた。打設前の現場で、何が“固められよう”としていたのか。
写真怪談

赤い前掛けの結び目

冬の午後四時、どんど焼きの煙が“帰り道”をつくった――赤い前掛けの結び目だけが、去年と違っていた。
写真怪談

足跡が呼吸する

国道沿いの歩道に、一直線の“狐の足跡”が残っていた――ただし、跡の底だけが妙に生ぬるく、きらきら光っていた。
ウラシリ怪談

無音の百八

百八つのはずの鐘を記録した音が、役所の保管で増え続けるそうです…
ウラシリ怪談

年越しそばの録音

管理室で年越しそばを食べていたはずなのに、録音だけが“二人分”すすり続ける夜があるそうです…
写真怪談

茅の輪の向こうへ

大晦日の昼、初詣の準備が進む神社で茅の輪をくぐった――それだけのはずだったのに、輪の内側だけが妙に“あたたかい”。
写真怪談

赤い目印の先に、落とし物は戻らない

川面に浮かぶ落ち葉の島——赤い目印の先で拾ってしまった“落とし物”は、あなたの名前まで流していく。
写真怪談

迎春の席に座るもの

サイドテーブルの上に敷いた一枚のランチョンマットは、「並んで座る人たち」という意味の模様だと店主は言った──正月飾りを載せた年の暮れ、その言葉の本当の意味を、僕は知ることになる。
写真怪談

大開運の木肌

街路樹の名札に紛れて、ひとつだけ黄色い「大開運」のお守りが括りつけられた木がある——その木肌に刻まれていくものを、僕はなるべく見ないようにしている。
写真怪談

空いている車線を走ってはいけない

センターラインを挟んで二車線と三車線に分かれた夜の幹線道路——なぜか市内行きの「歩道寄りの車線」だけ、どれだけ混んでいても一本分まるごと誰も並ばない。その理由を先輩に教えてもらう前に、俺は信号待ちの列の中で、その車線を歩いてくる“何か”を見てしまった。
写真怪談

山門の真ん中を歩くな

秋になると、誰も寺の山門の真ん中をくぐらない――分厚い銀杏の落ち葉の布団の下には、今もひとり分の重さが眠っているからだという。
写真怪談

片付けてはいけない置き場

散らかり放題の資材置き場を片付け始めた新人は、何度片付けても元通りになる「裏の山」と、そこに眠るはずのない“形”と向き合うことになる──。
写真怪談

夕暮れに腕を上げる木

夕焼け空を背に「万歳」する木は、境界を守る目印のはずだった──腕の数さえ数えなければ。
写真怪談

緑の網の下で眠るもの

住宅街の片隅、いつもゴミがひとつも置かれない緑の網と、四本のペットボトルだけが並ぶ集積所があった──その数が「五本」になった日から、私は遠回りをするようになった。
写真怪談

根の帳面(ねのちょうめん)

割れた塀の“中”は、夜になると数を数える——黄葉の枚数と人の数が揃った朝、町は静かにひとりぶん軽くなる。
写真怪談

帰り火の外灯

夕暮れ前から点る、庭の皿灯。傘に映った“顔”は、家の中ではなく、外のどこかへ帰ろうとしていた——。
写真怪談

地脈の指音(しおん)

掘っても掘っても何も出ないのに、音だけが続いた。翌朝、音の中心が移った場所に立つと、足の裏が……。
写真怪談

分別できないもの

この町では、赤は怒り、緑は後悔、青は声──感情も分別する決まりだという。間違えると、放送で名指しされる。ある朝、私は“冷めていない”ものを捨ててしまった。