日常の崩れ

【ウラシリ】怪談

まだ夏なのに

夏の陽射しに照らされた店先に、除雪機と新しいストーブが並んでいたそうです。冬を急ぐように、そこだけ季節がずれているかのように見えたといいます。夜になると、閉じたシャッターの奥から微かな響きがしたそうです……金属が息を漏らすような音でした。誰...
写真怪談

苔むす隙間から覗くもの

庭の隅に積み上げられた古いブロック。雨に打たれ、苔に覆われ、誰も気にも留めなくなったその塊を、ある夜ふと見てしまった。――苔の奥で、何かが瞬いた。まるで目のように、じっとこちらを窺っていたのだ。翌日、確かめようと近づいてみると、ブロックの隙...
【ウラシリ】怪談

森に誘う服

聞いた話ですが、とある古着屋に、奇妙な「再流行」が起きたことがあったそうです。店の片隅にあったのは、10年以上前の「森ガール」スタイルの服。 誰も手に取らなかったその服が、ある時期から突然、若者たちの間で売れ始めたといいます。買っていった客...
【ウラシリ】怪談

曇る水面の輪郭

佃島の佃煮店では、朝の仕込み中、湯気に包まれた厨房で、父子が無言のまま鍋を撹拌していたそうです。若い職人は、店に入ってからというもの、調理中に“背後で誰かが真似をするような音”を感じるようになったといいます。誰もいないはずの調理場の隅から、...
【ウラシリ】怪談

逆回転の瞬間

交差点に立つスマートフォン用充電スタンドに、同じ顔をした通行人が交互に現れると報告されたことが記録されています。見る者によれば、彼女は少しずつこちらに近づき、同じ言い回しを連続して口にする…一度聞いた後、振り返ると、やはりスタンド脇にいる。...
【ウラシリ】怪談

踊り場の教室

深夜、集合住宅の階段を降りた住人が、いつもとは異なる踊り場に出たと報告されています。そこには扉があり、覗けば内部が教室のように机と黒板が並んでいたというのです。本来あるはずの自室の位置と違う空間へ、一歩踏み込んだだけで入口が存在していたとい...
【ウラシリ】怪談

Rの部屋

とある古いゲームソフトで、不可解な報告が複数あるそうです。背景は明るく、音楽は軽快…それでも、突然音が歪み、ぐらりと画面が反転する瞬間があるそうです。その“R”の文字に触れると、色彩が反転し、不協和音が生まれ、画面内の何かが“こちらを見てい...
【ウラシリ】怪談

推測される年齢

その日、ある男性は動画サイトを眺めていましたが、奇妙なことが起きたそうです。突然、視聴している画面の片隅に、小さな文字が現れました。それは「あなたの年齢は……」と表示され、数字が勝手に動き始めました。30……32……28……41。やがて数字...
【ウラシリ】怪談

錆びた道の呼び声

春の夕暮れ、下校途中の少女が姿を消したそうです。家まであと数百メートル、道沿いには小さな畑と古いガードレールが並んでいたといいます。その道を通った別の児童が、「誰もいないのに、呼びかける声がした」と話していました。声は風の向きと関係なく、一...
【ウラシリ】怪談

録画しています

鍵を回した音で、廊下の奥の何かが一瞬だけ、ぬるりと動いたように見えたそうです。照明をつけると、リビングの観葉植物が、まるで移動したかのような位置にあったといいます。鉢の底には、薄く擦れたような跡が床に残っていたそうです。それだけであれば気の...
【ウラシリ】怪談

濡れた蓋

雑誌棚の最下段、色褪せた地方観光特集の一頁に、村の下水マンホールの写真が載っていたそうです。灰色の鉄蓋いっぱいに小さな生き物の絵が塗られ、観光客向けに全国へ広がっているといいます。ただ、その村のものは妙でした。人通りのない路地の中央に埋め込...
【ウラシリ】怪談

迎えを待つ椅子

認知症カフェの一角に置かれた“模擬バス停”は、いつも同じ角度で椅子が揃っていたそうです。訪れる人が座っても、立ち去った瞬間には必ず元の向きに戻っていたといいます。ある日、閉店後の防犯カメラに、誰もいないはずのバス停で椅子がゆっくりと回転し、...
【ウラシリ】怪談

帳簿に載らぬ封筒

都内の落とし物保管所では、毎日のように財布や傘が積み上げられるそうです。その中に、帳簿に記録されない“封筒”が紛れ込むことがあるといいます。ある夜、当番の職員が机に置かれた封筒を開けると、中には千円札ばかりが詰まっていました。だがどれも片側...
【ウラシリ】怪談

受領簿の筆跡

落とし物センターに傘を取りに来た人がいたそうです。しかし駅員は「すでに受け取り済み」と答えたといいます。受領簿を見せられると、確かにその人の名前が書かれていたそうです。ただ、その筆跡は本人のものではなく、誰かが拙く真似たような字だったといい...
【ウラシリ】怪談

点滅する交差点の影

住宅街の街灯が夜通し点滅を繰り返していたそうです。信号も同じように瞬き、赤と青が途切れ途切れに照らしては消えました……。ふと、信号が赤に変わる瞬間、交差点の真ん中に立つ人影が見えたといいます。次に点いた時には、もう歩道に移っていたそうです。...
【ウラシリ】怪談

赤く染まる浴室

深夜、築年数の古いアパートの一室に、若い男が越してきたそうです。そこは「事故物件」と呼ばれ、かつて風呂場で女性が亡くなったと噂される部屋でした。最初の異変は、湯船に浸かっていた時のことだといいます。壁のタイルに映る自分の姿が、ふと二重に見え...
【ウラシリ】怪談

白くぼやけた秋ナス

畑の隅で収穫された秋ナスは、どれも白くぼやけていたそうです。紫の艶を失った実は、影だけが濃く残り、並ぶ姿は不気味に沈んでいたといいます……。農家が一つを手に取ると、指の跡が沈み込み、跡はいつまでも消えなかったそうです。翌朝、その跡は人の顔の...
写真怪談

斜路(しゃろ)の壁

都心の繁華街の片隅に、緩やかな坂道が一本ある。観光客は通らず、地元の人も足早に通り過ぎるだけ。その坂の途中、ある建物の外壁が数年前から不気味な模様で覆われていると噂になっていた。それは、黒地に青と白の抽象画。雲のようなもの、花のようなもの、...